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リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

糖尿病の有名文献もろもろ-5【LIXIA,LEADER,セマグルチド関連】

今回はGLP1作動薬についての文献をみていきます。

 

まずはリキセナチド(リキスミア®)についての文献から。

 

Lixisenatide in Patients with Type 2 Diabetes and Acute Coronary Syndrome.(ELIXA)

(2型糖尿病かつ急性冠動脈症候群患者へのリラグルチド)

N Engl J Med. 2015 Dec 3;373(23):2247-57.

PMID:26630143

 

P:180日以内に急性冠動脈イベントを経験した2型糖尿病患者(6068人)

E:リキセナチド投与(初回投与量10μg/日を2週間投与後、最大20μg/日へ増量) (3034人)

C:プラセボ投与(3034人)

O:(1次アウトカム)心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院の複合

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院+心不全による入院またはこれら+冠動脈再建術

ITT解析されているか?:されている

脱落率:E群27.5%、C群24.0%

患者背景(ベースライン等):30歳以上(平均C群60.6±9.6,E群59.9±9.7)、女性約30%、平均体重C群85.1±19.6,E群84.6±19.2、eGFR30 mL/分/1.73m3以上、HbA1c5.5~11.0(平均C群7.6±1.3,E群7.7±1.3)、 平均罹病期間年数E群9.4±8.3、C群9.2±8.2

平均追跡期間:25か月

 

結果

1次アウトカム(心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院の複合)

 E群13.4% vs C群13.2%(ハザード比 1.02;95%CI:0.89-1.17)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+心不全による入院

  E群15.0% vs C群15.5%(ハザード比 0.97;95%CI:0.85–1.10)

 ・1次アウトカム+心不全による入院+冠動脈再建術

 E群21.8% vs C群21.7%(ハザード比 1.00;95%CI:0.90–1.11)

 ・総死亡

  E群7.0% vs C群7.4%(ハザード比 0.94;95%CI:0.78–1.13)

有害事象

 ・治療中断につながる有害事象

  E群11.4% vs C群7.2%(ほとんどが胃腸症状による差)

 

感想

この試験は、非劣性だけでなく優越性の検証も兼ねた試験デザインとなっておりました(それぞれのマージンの上限は1.3および1.0)。結局非劣性は示せましたが、優越性は示せず。対象患者がかなり限られるので、この結果をどう捉えてよいか難しいのですし、どこまで一般の患者に適応できるのかは分かりませんが。有害事象もありますし…

 

次は、リラグルチド(ビクトーザ®)に関する文献を。

 

Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.(LEADER)

(2型糖尿病患者におけるリラグルチドと心血管アウトカム)

N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):311-22.

PMID:27295427

 

P:心血管リスクの高い糖尿病患者(9340人)

E:リラグルチド投与(1.8mg/日)(4668人)

C:プラセボ投与(4672人)

O:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中、冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

ITT解析されているか:FAS

脱落率:記載されていない??

患者背景:HbA1c7.0以上(平均E群8.7±1.6,C群8.7±1.5)、平均年齢E群64.2±7.2,C群64.4±7.2(心血管リスクは50歳以上と60歳以上で条件が違うが、詳しくは本文を)(女性約35%)、平均体重E群91.9±21.2, C群91.6±20.8、平均BMI E群32.5±6.3,C群32.5±6.3、平均HbA1c E群8.7±1.6,C群8.7±1.5、平均罹病期間年数E群12.8±8.0,C群12.9±8.1

平均追跡期間:3.8年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合)

 E群13.0% vs C群14.9% (ハザード比0.87;95%CI:0.78-0.97)→NNT 53/3.8年(=200/年)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

 E群20.3% vs C群22.7%(ハザード比0.88;95%CI:0.81–0.96)→NNT 42/3.8年(=159/年)

 ・総死亡

 E群8.2% vs C群9.6%(ハザード比0.85;95%CI:0.74–0.97)→NNT 72/3.8年(=272/年)

有害事象

 ・治療中断につながる有害事象

 E群9.5% vs C群7.3%(ほとんどが胃腸症状による差)

 

感想

こちらの試験も、非劣性だけでなく優越性の検証も兼ねた試験デザインとなっておりました(それぞれのマージンの上限は1.3および1.0。イメージ的には1次アウトカムが非劣性、2次アウトカムが優越性という感じでしょうか。)。リキセナチドでは示されなかった優越性がこちらでは示されました。ただし、用量が日本の最大用量の0.9mgの倍量だということには注意しないといけません。優越性は示せましたが、NNTをみるとそれほど差はないのかなと思います。もう少し長期間の結果をみてみたいなと。

 

最後に日本ではまだ発売されていないセマグルチドについて

 

Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes.

(2型糖尿病患者へのセマグルチドと心血管アウトカム)

N Engl J Med. 2016 Sep 15.

PMID:27633186

 

P:2型糖尿病患者(3297人)

E:セマグルチド投与群(週に1回)(0.5mg:826人、1mg:822人、計1648人)

C:プラセボ投与群(1649人)

O:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合、冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

ITT解析はされているか?:(おそらく)されている

脱落率:E群21.2%、C群18.8%

患者背景:HbA1c7.0以上(平均8.7±1.5)、平均年齢64.6±7.4 (心血管リスクは50歳以上と60歳以上で条件が違うが、詳しくは本文を)(女性約40%)、平均体重92.1±20.6、平均BMI32.8±6.20、平均罹病期間年数13.9±8.1

 

平均追跡期間:2.1年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合)

 E群6.6% vs C群8.9% (ハザード比0.74;95%CI:0.58-0.95)→NNT 44/2.1年(=91/年)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

 E群12.1% vs C群16.0%(ハザード比0.74;95%CI:0.62–0.89)→NNT 26/2.1年(=32/年)

 ・総死亡

 E群3.8% vs C群3.6%(ハザード比1.05;95%CI:0.74–1.50)

 ・新規または悪化する腎症

 E群3.0% vs C群1.8%(ハザード比1.76;95%CI:1.11–2.78)

 ・網膜症合併症

 E群3.8% vs C群6.1%(ハザード比0.64;95%CI:0.46–0.88)

有害事象

 ・胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢など)

 E群(0.5mg)50.7%、E群(1.0mg)52.3% vs C群(0.5mg)35.7%、C群(1.0mg)35.2%

 ・治療中断につながる有害事象

 E群(0.5mg)11.5%、E群(1.0mg)14.5% vs C群(0.5mg)5.7%、C群(1.0mg)7.6%(ほとんどが胃腸症状による差)

 

感想

この試験は非劣性の試験ですが、ハザード比は1.0を下回っています(ちなみに非劣性マージンは1.8でした)。追跡期間は短いですがしっかり差がついている印象です。有害事象(特に胃腸症状)による治療中断が、リキセナチド、リナグルチドと比べるとやや多い印象ですが、別の試験なので直接は比べられないとは思います。投与方法は週1回なので、そういった部分でもそれらの2剤より有意ではないかと思います。セマグルチドに関しては、内服薬も準備されているようなので、注目していきたいと思います。腎症や網膜症合併症に関しては、今後追っていく必要がありそうです。

 

まとめ

GLP1製剤は、作用機序的からDPP4阻害剤と比較されうる製剤かと思います。前回みたDPP4阻害剤の長期投与試験であるTECOS,SAVOR-TIMI53では同等性でしたが、今回みたGLP1製剤の試験では優越性が示唆されています。現在発売されているGLP1製剤は注射剤のみで、注射剤は処方する側からも敬遠されがちです。私はGLP1製剤の導入の指導をしたことはありませんが、骨粗鬆症を含む他の注射剤の導入の指導は何度もしたことがあります。最初は抵抗のある方が多いのですが、慣れれば高齢の方でも抵抗なく使用できるケースが多いように思います。長期投与の心血管イベントへの効果はGLP1製剤の方が優れている可能性があるので、こういったエビデンスを示し、どちらかがいいのかを患者さんに選んでもらうのもいいように思います。週1回製剤も発売されていますし、利便性はかなり高まっているとは思います。製剤間での効果の違いはありそうですので、その辺は注意が必要かもしれませんが。GLP1製剤とDPP4阻害剤を比較した試験もみてみたいものです。

 

てことで、今回はこの辺で。