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リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

ポリファーマシーもろもろ-2

前回は、【ポリファーマシーと有害アウトカム】、【ポリファーマシーによる種々の影響】、【処方カスケード】について書いていきましたので、今回はその続きを。

ただ、解析手法等々があまり理解できず断念した文献もあるので、文献が偏っている可能性が。。。

【PIMs(Potentially Inappropriate Medications 、潜在的な不適切処方)】
やや古い報告ではあるが、1991年から2006年の間に発表された記事の電子検索によると、高齢者へPIMsの割合は、アメリカやヨーロッパで明確に高く、地域に住む高齢者は12%である対し、老人ホーム入所者は40%に上った。1)
イタリアの65歳以上の合計1,716人のナーシングホーム入所者を対象とした調査では、48%に少なくとも1つのPIMsがあり、18%に2つ以上のPIMsがあった。ベースラインで2つ以上あった住民では、12か月の追跡期間の間で入院の確率がより高かった(ハザード比1.73、95%CI:1.14-2.60)。2)
59,042人の高齢者(65-74歳:39,358 [66.7%]、75-84 歳: 16,903 [28.6%]、85歳以上:2781 [4.7%])を用いた台湾のコホート研究では、4半期ごとに使用している薬剤についての4半期ごとの情報が調査され、薬剤数の1年あたりの平均の変化は、65-74歳で最も多く(絶対差+2.14, 95% CI 2.10-2.19)、次は75-84歳(+1.79, 95% CI 1.70-1.88)、最後が85歳以上(+0.71, 95% CI 0.36-1.05)だった。PIMsは、65-74歳(+0.16 [0.15-0.18]) 、75-84歳(+0.09 [0.06-0.08])で増えたが、85歳以上では減った(-0.15 [-0.26 to -0.04])。こちらの研究では薬剤数やPIMs数と入院、大腿骨頚部骨折、死亡との関連も検討されており、薬剤数は1-4剤と比較して5-9剤および10歳以上で入院、大腿骨頚部骨折は増加していたが、5-9剤による死亡は変わらず、10歳以上ではむしろ減少していた。PIMsの使用に関しては、入院、大腿骨頚部骨折の発生率を上昇させたが、死亡は減少させていた。3)
日本の在宅療養高齢患者におけるPIMsとADEに関する調査では、平均82.7歳の4,243人を対象に行われ、1つ以上のPIMsが48.4%にみられた。また、薬剤師の訪問にて8%の患者にPIMsに関連するADEがみられた。4)
なお、1)においてはBeers’ criteria や McLeod’s criteriaにて、2)3)においてはBeers’ criteria 、4)においては日本版Beers criteriaにてPIMsが定義された。

【アンダーユーズ関連】
一般開業医の外来患者150人を対象としたポリファーマシー(5剤以上の内服と定義)とアンダーユーズ(ガイドラインと照らし合わせての治療不足)に関する調査では、ポリファーマシーは61%にみられ、アンダーユーズは47人(31%)にみられた。ポリファーマシー患者のうち42.9%は治療が不十分であり、それとは対照的に、使用している薬が4剤以下の患者では13.5%だった(OR4.8,95%CI2.0-11.2)。5)
平均年齢は84.4歳の80歳以上の地域住民を対象に行った調査では、平均の処方薬剤は5剤(範囲:0-16剤)、ポリファーマシー(5剤以上)は58%で、アンダーユーズは67%だった。死亡と入院はそれぞれ8.9%と31.0%だった。薬剤数やミスユーズを調節後では、アンダーユーズの薬剤が付加されるごとに、死亡のリスクは増え(HR 1.39, 95% CI 1.10, 1.76)、入院のリスクも増えた(HR 1.26, 95% CI 1.10, 1.45)。6)
アイルランドの高齢者の横断研究を用いた65歳以上の方を対象とした調査では、集団(n=3,454)の全体としてのPIMsの割合は14.6%だった。最も一般的なPIMsと同定されたのは、中等度から重度高血圧へのNSAID(200人、5.8 %)、冠状動脈、脳、末梢血管症状または閉塞イベント歴のない患者へのアスピリン投与(112人、3.2 %)だった。全体としてのアンダーユーズの割合は30%(n=1,035)だった。最も頻度の高いアンダーユーズは収縮期血圧が断続的に160mmHg以上(n=341,9.9%)への高血圧治療だった。年齢、性別、多疾患併存を調節後、PIMsとアンダーユーズ、ポリファーマシーの間には大きな関連があった(PIMs:調節OR 2.62, 95 % CI 2.05-3.33)(アンダーユーズ:調節OR 1.46, 95 % CI 1.23-1.75)。7)
スペインの65歳以上を対象とした横断研究では、合計1,844の薬剤が407人の患者に処方された。全体で45%がポリファーマシーだった。START criteriaには170症例(41.8%)で合計303のアンダーユーズが同定された。ポリファーマシーも独立してSTART criteriaによる少なくとも一つのアンダーユーズを予測した(OR 2.19, 95 % CI 1.36-3.55)8)
なお、5)においては診療ガイドラインにて、6)7)8)においてはSTOPP/START criteriaにてアンダーユーズが定義された。

【ポリファーマシーへの介入効果】
STOPP criteria を用いた、フレイルの入院高齢患者146人(平均年齢:85歳、毎日の平均剤数:7剤)におけるRCTでは、コントロール群に比べて介入群で、退院時のPIMsの減少患者はコントロール群に比べて介入群で2倍となった(それぞれ39.7%、19.3%(P=0.013))。退院時、一つ以上のPIMがまだあった患者の割合は、2つの群で変わらなかった。1年後まで50人の患者のフォローアップを行い、入院中に中止されたPIMsの大部分(17/28; 61 %)は退院後も再開されていなかった。9)
STOPP/START criteria の効果をみるために行われたRCTのSR&MAでは、全体としてPIMsの割合を減らすことができたが、異質性の高さ(I²=86.7%)が問題となった。10)
死亡、入院、薬剤数の変化に関するポリファーマシーを削減する戦略のインパクトを検索することを目的としたポリファーマシーを削減することを目的とした比較試験のSR&MAでは、ポリファーマシーを削減する戦略は総死亡には効果がなかった(オッズ比 1.02; 95%信頼区間 0.84-1.23)。入院患者数を減らすという観点から、1つの研究のみ介入群に有利な改善が認められた。ベースラインとして、介入群およびコントロール群の両方で平均7.4剤を内服していた。フォローアップ時に、介入群の薬剤数の加重平均数は減少(-0.2)したが、コントロール群では増加した(+0.2)。11)
他にもありましたが、解析手法がよく分からず断念…12)

なお、減薬過程としては、
(1)患者が現在使用している薬剤を明らかにし、それぞれの服用理由を明らかにする。
(2)減処方への介入へ要求される強度を決定するために、個々の患者の薬剤関連の害の全体的なリスクを考慮する。
(3)現在と未来の潜在的な害や負荷を比べて、現在と未来の潜在的なベネフィットに関してそれぞれの薬剤を評価する。
(4)ベネフィットと害の比が最も小さく、有害な離脱反応や病気の再発症状の最も少ない見込みの中断する薬剤を優先順位づける。
(5)中止レジメンを実施し、アウトカムの改善や有害反応の発症について患者をよく観察する。
と、提言されている。13)
当たり前のことだが、非常に大切なことのように思う。常に心掛けたいものである。

次に、減処方の患者の障壁とそれを可能にさせるもの(イネーブラ)に関する系統的レビューの紹介をする。このレビューによると、中止の‘妥当性’の非同意/同意、中止の‘プロセス’の有無、薬剤中止への‘影響’に積極的/消極的、の3つのテーマが潜在的な障壁とイネーブラとして同定され、中止の‘恐怖’や薬剤が‘嫌い’は第4の障壁・イネーブラとして同定された。
もっとも共通の障壁/イネーブラとして同定されたのは、中止の‘妥当性’であり、15の研究が障壁として、18の研究がイネーブラとして同定された。14)
ややユニークな報告のようにも思うが、これも非常に重要なことと考える。ずっと続けてきた薬剤を中止するのだから、患者側からすれば抵抗感もあるだろう。それに対する説明と同意が必要ということであろう。

今まではクライテリアにて適切な処方であるかどうかを判断してきたが、実臨床の場ではそこには当てはまらない不適切な処方の方がよく目にする。それに関する報告があったので、最後に紹介する。
13のオランダの地域の薬局にて、5剤以上を使用している65歳以上の地域住民457人が薬剤のレビューを受けた研究では、潜在的な薬剤関連問題があると同定された総数は1,656だった(1患者あたり平均3.6)。81%の薬剤関連問題はSTOPP/START criteriaと関連しなかった。DRPsと同定されたなかで、START criteriaの存在の割合は、STOPP criteriaより多かった(13 vs. 5.7%, p < 0.01)。STOPP criteriaに関する推奨の実施率は、START criteriaの実施率と比較して高かった(56 vs. 39%, p < 0.01)。STOPPおよびSTART criteriaの両方の実施率は、STOPP/START criteriaと関連しない推奨と比較して低かった(66%, p = 0.047, p < 0.001)。15)
ここではDOCUMENT systemを使用して潜在的な薬剤関連問題が同定されており、Table2.に記載してあるが、DOCUMENT systemにはSTOPP/START criteriaには含まれないような、過量用量、過少用量、検査モニタリングの未実施等が含まれている。


※なおPIMs(潜在的に不適切な処方)は、調査によってPotencially inappropriate drug prescriptionsやPotencially inappropriate prescribing、アンダーユーズ(under use)は、undertreatedやprescribing omissionsと記載されていることもありましたが、ややこしくなるので今回はPIMsとアンダーユーズで統一しています。


つづく


1) J Clin Pharm Ther. 2007 Apr;32(2):113-21.PMID:17381661
2) Drugs Aging. 2010 Sep 1;27(9):747-58.PMID:20809664
3) CMAJ. 2015 Mar 3;187(4):E130-7.PMID:25646290
4) BMJ Open. 2015 Aug 10;5(8):e007581. PMID:26260347
5) Br J Clin Pharmacol. 2008 Jan;65(1):130-3. Epub 2007 Jun 19.PMID:17578478
6) Br J Clin Pharmacol. 2016 Nov;82(5):1382-1392.PMID:27426227
7) Eur J Clin Pharmacol. 2014 May;70(5):599-606.PMID:24493365
8) Eur J Clin Pharmacol. 2015 Feb;71(2):199-207.PMID:25380629
9) Drugs Aging. 2014 Apr;31(4):291-8. PMID:24566877
10) J Clin Pharm Ther. 2016 Apr;41(2):158-69.PMID:26990017
11) Br J Clin Pharmacol. 2016 Aug;82(2):532-48.PMID:27059768
12) Cochrane Database Syst Rev. 2014 Oct 7;(10):CD008165.PMID:25288041
13) JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):827-34.PMID:25798731
14) Drugs Aging. 2013 Oct;30(10):793-807.PMID:23912674
15) Eur J Clin Pharmacol. 2015 Oct;71(10):1255-62.PMID:26249851