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リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

ポリファーマシーもろもろ-1

2016年は、何かポリファーマシーの正体を捉えるのに必死になっていました。様々な研究結果を学ぶことで、少しずつ分かってきた気がします。研究が次々に発表されてきておりますので、ここで一度、計4回に分けてまとめていきたいと思います。

【ポリファーマシーと有害アウトカム】

ポリファーマシーの定義は様々あるが、5剤以上の内服というのが定説になりつつある。

オーストラリアの地域に住む70歳以上1,705人におけるポリファーマシーのカットオフ値とアウトカムについて調査した研究では、認知機能障害:3.5剤(薬剤が1剤増えるごとの調節後オッズ比1.02(95%CI:0.96-1.09))、転倒:4.5剤(1.07(95%CI:1.03-1.12))、死亡率:4.5剤(1.09(95%CI:1.04-1.15))、身体機能障害:5.5剤(1.08(95%CI:1.00-1.15))、フレイル:6.5剤(1.13(95%CI:1.06-1.21))であることが分かった。1)

中央および西マサチューセッツの18のナーシングホーム入居者410人を対象とした研究では、薬剤有害事象(ADE)のリスクのオッズ比は薬剤数5剤未満と比べて、5-6剤2.0(95%CI:1.2-3.2)、7-8剤2.8(95%:1.7-4.7)、9剤以上3.3(95%CI:1.9-5.6)だった。なお、その他の検討された関連因子では、抗生剤/抗感染症薬4.0(95%:2.5-6.2)、抗てんかん薬3.2(95%CI:2.1-4.9)、抗うつ薬1.5(95%CI:1.1-2.3)等でリスクの上昇が認められた一方で、栄養剤/サプリメントは0.42(95%CI:0.27-.063)と、リスクの低下が認められた。2)

また、処方医の増加がADEの増加と関連するとの報告もある。フィラデルフィアペンシルベニアの住民405人に対して行われた電話調査のコホート研究では、1人の処方医の追加が、ADEの報告を29%(オッズ比1.3、95%CI:1.0-1.6)増加させた。3)

次に、具体的なADEとして大腿骨頚部骨折を見ていきたい。台湾のコホート研究によると、男性よりも女性が、薬剤数は多いほど、年齢が上がるほど、骨折リスクが上昇することが示唆された。4)

参考までに、TABLE.2、TABLE.3を。

TABLE.2 年齢、人口密度調整後の大腿骨頚部骨折の性別と薬剤数のオッズ比及び95%信頼区間

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TABLE.3 性別、人口密度調整後の大腿骨頚部骨折の年齢と薬剤数のオッズ比及び95%信頼区間

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【ポリファーマシーによる種々の影響】

アピキサバンおよびワルファリン服用患者とポリファーマシーの関連を調査した研究では、5剤以下と比べて6-8剤、9剤以上では総死亡(それぞれ、調節後オッズ比1.41(95%CI:1.23-1.62)、2.03(95%CI:1.74-2.38))、心筋梗塞/全身塞栓症(調節後オッズ比1.27(95%CI:1.02-1.58)、1.41(95%CI:1.19-1.99))、大出血(調節後オッズ比1.24(95%CI:1.04-1.49)、1.72(95%CI:1.41-2.10))が増加した。なお参加患者18,201人中3/4が5剤以上のポリファーマシーだった。5)

地域の病院に入院した5剤以上のポリファーマシーの65歳以上を対象とした前向き16週間のコホート研究にて、潜在的なCYPによる薬物間相互作用(DDI)の有病率を検討された。潜在的なCYPによるDDIの確率は80%だった。最低1つのCYPによるDDIの確率は5-9剤で50%、10-14剤で81%、15-19剤で92%、20剤以上で100%だった。年齢や性別の調整後、それぞれのレジメンに5剤追加するごとに12%のCYPによるDDIの潜在的なリスクが増加した(OR 1.12; 95% CI 1.09-1.14)。6)

栄養状態とポリファーマシーの関連を調査した研究もいくつかあったが、上手く解釈できていないので、今回は見送る。7,8)

【処方カスケード】

処方カスケードには、例として以下のようなものがある。9)



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この中でも個人的に気になったNSAIDによる高血圧とコリンエステラーゼ阻害剤による失禁についての参考文献をみてみた。

まずNSAIDによる高血圧についてであるが、1981年11月~1990年2月までに高血圧治療を開始した9411人で調査された。最近の高血圧治療開始についてのNSAID使用の調整オッズ比は未使用者と比べて1.66(95%CI 1.54-1.80)と、有意に高かった。オッズ比はNSAIDの1日量が増えるとともに増加した。調整オッズ比は、低用量使用者は非使用者と比べて1.55(95%CI 1.38-1.74)、中等量は1.64 (95% CI, 1.44-1.87)、高用量は1.82(95%CI 1.62-2.05)だった。10)

コリンエステラーゼ阻害剤による失禁は、カナダのオンタリオの住民の44,884人の認知症の高齢者を対象として後ろ向きコホート研究が行われた。潜在的な交絡因子の調整後、コリンエステラーゼ阻害剤を処方された認知症の高齢患者が、後に抗コリン薬を投与されるリスクがコリンエステラーゼ阻害剤非投与群と比較して上昇することが分かった(4.5% vs 3.1%; P<.001; 調節ハザード比, 1.55; 95%CI 1.39-1.72)。11) なお、使用されたコリンエステラーゼ阻害剤の95%がドネペジルであった。

つづく

1) J Clin Epidemiol. 2012 Sep;65(9):989-95.PMID:22742913
2) Arch Intern Med. 2001 Jul 9;161(13):1629-34.PMID:11434795
3) Am J Geriatr Pharmacother. 2007 Mar;5(1):31-9.PMID:17608245
4) Medicine (Baltimore). 2010 Sep;89(5):295-9. PMID:20827106
5) BMJ. 2016 Jun 15;353:i2868. PMID:27306620
6) Ann Pharmacother. 2013 Mar;47(3):324-32.PMID:23482734
7) Drugs Aging. 2011 Apr 1;28(4):315-23.PMID:21428466
8) Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2011 May;20(5):514-22. PMID:21308855
9) https://www.nps.org.au/australian-prescriber/articles/the-prescribing-cascade
10) JAMA. 1994 Sep 14;272(10):781-6.PMID:8078142
11) Arch Intern Med. 2005 Apr 11;165(7):808-13.PMID:15824303