リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

ポリファーマシーもろもろ-6【ポリファーマシーとフレイル・サルコペニアの関連】

今回は、ポリファーマシーとフレイル・サルコペニアとの関連についての論文を。3つの論文を取り上げますが、うち2つは先日の居酒屋抄読会で取り上げたものです。

 

まずはポリファーマシーとフレイルの関連についての論文を2つ。

 

Is Polypharmacy Associated with Frailty in Older People? Results From the ESTHER Cohort Study.

(ポリファーマシーは高齢者のフレイルと関連しますか?ESTHERコホート研究からの結果)

J Am Geriatr Soc. 2017 Feb;65(2):e27-e32.

PMID: 28024089

 

P:57歳から84歳の3,058人のSaarland(ドイツ)の地域住民(平均年齢:69.6±6.3、女性:52.4%)

E:ポリファーマシー(5-9剤)またはハイパーポリファーマシー(10剤以上)

C:非ポリファーマシー(0-4剤)

O:フレイルの有病率、3年追跡によるフレイル発症率

 

デザイン:観察研究

2次アウトカム:プレフレイルの有病率・発症率、年齢別・教育期間別・喫煙歴別のフレイルリスク

追跡期間:3年(n=1,998)

調節因子:年齢、性別、教育期間・喫煙歴・ベースラインのフレイルの状況、TMIスコア(Total Morbidity Index)、CIRS-G(Cumulative Illness Rating Scale for Geriatrics)(14 領域について 5 段階で各領域の重症度を評価するもので、総得点 を問題が存在していた領域の数で除した値を重症度指数)

Limitation:より健康な集団だった可能性。薬剤数の評価がベースラインのみだったこと。フォローアップ中のイベントが考慮されていないこと。残存交絡因子の可能性。

フレイルの基準:Friedの修正バージョンを使用(歩行速度≦0.8m/s、握力:男性≦30kg、女性≦20kg; 身体活動の合計スコア≤9.4)。このうち3つに該当でフレイル、1-2つでプレフレイル、0で非フレイル。

 

【結果】

1次アウトカム(ポリファーマシーにおけるプレフレイル・フレイルの有病率)

2次アウトカム(年齢、BMI、性別、教育期間、喫煙状況によるフレイル有病率)

 

   

プレフレイル(OR)

フレイル(OR)

ポリファーマシー

(0-4剤が基準)

5-9剤

1.20(1.0-1.44)

2.30(1.60-3.31)

10剤以上

1.48(1.03-2.14)

4.97(2.97-8.32)

性別(女性が基準)

男性

0.55(0.46-0.65)

0.24(0.17-0.34)

教育期間

(9年以下が基準)

10,11年

0.79(0.63-0.97)

0.60(0.39-0.92)

12年以上

0.62(0.50-0.78)

0.65(0.41-1.02)

喫煙状況

(非喫煙者が基準)

過去の喫煙者

0.90(0.75-1.07)

1.09(0.78-1.52)

喫煙者

1.68(1.21-2.33)

3.07(1.71-5.50)

 

1次アウトカム(ポリファーマシーにおけるプレフレイル・フレイルの発病リスク)

2次アウトカム(年齢、BMI、教育期間、喫煙状況とプレフレイル、フレイルの発病リスク)

   

プレフレイル(OR)

フレイル(OR)

ポリファーマシー

(0-4剤が基準)

5-9剤

1.33(1.05-1.67)

1.85(1.24-2.76)

10剤以上

1.86(1.11-3.10)

3.08(1.55-6.12)

性別(女性が基準)

男性

0.64(0.51-0.80)

0.46(0.31-0.68)

教育期間

(9年以下が基準)

10,11年

1.16(0.88-1.52)

0.70(0.42-1.18)

12年以上

1.04(0.80-1.37)

0.48(0.26-0.87)

喫煙状況

(非喫煙者が基準)

過去の喫煙者

0.90(0.72-1.13)

0.99(0.66-1.48)

喫煙者

0.89(0.60-1.33)

2.15(1.14-4.06)

フレイルの状態

(非フレイルが基準)

プレフレイル

2.39 (1.94–2.94)

5.06 (3.17–8.07)

 

【考察】

現在のポリファーマシーはフレイルの有病率、将来のフレイルの発生率のどちらとも関連しているという結果。交絡因子がどこまで調整できているのか…

もう一つ読んで考えてみます。

 

 

Polypharmacy and frailty: prevalence, relationship, and impact on mortality in a French sample of 2350 old people.

(ポリファーマシーとフレイル:フランスの2,350人の高齢者サンプルにおける有病率、関連、死亡への影響)

Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Jun;24(6):637-46.

PMID: 25858336

 

P:フランスの2,350人の70歳以上の高齢者(平均年齢は83.3±7.5歳、59.4%が女性)(フレイル:17.0%、ポリファーマシー(5-9剤):53.6%、過度のポリファーマシー(10剤以上):13.8%)

E:ポリファーマシー、過度のポリファーマシー

C:非ポリファーマシー

O:フレイルの有病率の差

 

デザイン:観察研究

2次アウトカム:性別、年齢、社会的孤立、健康の自己評価、併存疾患、気分の自己評価、認知機能障害、聴覚障害、ADLの困難さとフレイルとの関連

サブ解析:ポリファーマシー、フレイルと死亡率の関連

Limitation:握力や歩行速度を1/4の参加者しか計測できなかった(しかも自己報告)。健康状態は比較的良いかもしれない。年金受給者210万人のうち2,305人のみのため、少ないかも。

フレイルの定義:以下の5つの構成要素のうち3つ以上を有する場合をフレイル、1-2つはプレフレイル

・栄養:意図しない体重減少またはBMI≦18.5 kg / m2

・エネルギー:「あなたは今弱いと感じていますか?」という質問に対する肯定的な答え、または「あなたはたくさんのエネルギーを持っていますか?」という質問に消極的な答え。

身体活動:国際身体活動質問票に基づく活動レベルが低い。

・体力:5kgの袋を持ち上げにくい。

・移動性:階段を上ったり下ったりするのが難しい。

 

【結果】

1次アウトカム(ポリファーマシー、過度なポリファーマシーとフレイルとの関連)

2次アウトカム(その他の項目とフレイルとの関連)

 

基準

比較

プレフレイル(OR)

フレイル(OR)

要介護(OR)

性別

女性

男性

0.61(0.48–0.77)

0.24(0.17–0.35)

0.28(0.18–0.42)

年齢

70-79歳

80-89歳

1.64(1.27–2.11)

2.55(1.73–3.77)

2.40(1.44–4.00)

90歳以上

2.68(1.80–4.01)

6.49(3.83–10.97)

7.78(4.19–14.47)

社会的孤立

なし

あり

1.34(1.01–1.78)

1.70(1.17–2.47)

0.97(0.62–1.52)

健康の自己評価

よい

まずまず

2.11(1.63–2.73)

4.55(3.11–6.65)

3.97(2.51–6.29)

悪い

5.13(2.43–10.81)

16.58(7.28–37.74)

19.53(8.16–46.71)

併存疾患

0-1

2-3

1.18(0.88–1.58)

1.47(0.97–2.22)

1.36(0.83–2.24)

4以上

1.47(1.06–2.02)

1.36(0.88–2.10)

1.38(0.83–2.29)

気分の自己評価

よい

まずまず

1.90(1.43–2.53)

2.07(1.42–3.01)

2.76(1.80–4.26)

悪い

2.23(0.97–5.15)

4.51(1.80–11.3)

4.67(1.72–12.7)

認知機能障害

なし

あり

1.31(0.87–1.98)

1.88(1.13–3.12)

2.59(1.50–4.47)

聴覚障害

なし

あり

1.44(1.12–1.84)

1.61(1.13–2.27)

2.34(1.57–3.49)

IADLの困難さ

なし

あり

2.45(1.67–3.57)

11.2(7.26–17.14)

115(59–226)

ポリファーマシー

0-4剤

5-9剤

1.82(1.44–2.37)

1.77(1.20–2.61)

1.64(1.01–2.65)

10剤以上

2.51(1.49–4.23)

4.47(2.37–8.42)

6.26(3.08–12.74)

 

2次アウトカム(薬剤数と死亡との関連)

非ポリファーマシーvsポリファーマシー:HR 1.25 (0.94–1.67)

非ポリファーマシーvs過度のポリファーマシー:1.83 (1.28–2.62)

※調節因子:年齢、性別、併存疾患、認知機能、IADLの困難さ

 

2次アウトカム(フレイルと死亡との関連)

フレイルなしvsプレフレイル:HR 1.36 (0.91–2.03)

フレイルなしvsフレイル:2.56 (1.63–4.04)

フレイルなしvs要介護:3.45 (2.15–5.53)

 

【感想】

今回もフレイルとポリファーマシーは関連しているという結果。やはり交絡因子が気になります。先ほどの論文よりも社会的因子が多く調整されているようです。それと、フレイルの基準ですね。少し前の2015年の論文なので、今の基準とは違うのでしょうか。

次のサルコペニアの論文も読んで、まとめて考えていきます。

 

 

Polypharmacy as a Risk Factor for Clinically Relevant Sarcopenia: Results From the Berlin Aging Study II.

(臨床的に関連したサルコペニアの危険因子としてのポリファーマシー: Berlin Aging Study IIの結果。)

J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2017 Dec 12;73(1):117-122.

PMID: 28481965

 

P: Berlin Aging Study IIからの1,502人の参加者(平均年齢は68.7±3.7歳、50.7%が女性)

E:5剤以上の内服(n=317)

C:5剤未満の内服(n=1,185)

O:サルコペニアのリスク

 

デザイン:観察研究

その他のアウトカム:年齢、低身体活動、高血圧、糖尿病、関節痛/腫脹、eGFRによるサルコペニアリスク、性別ごとでの条件別のサルコペニアリスク、ポリ・非ポリにおける歩行速度の減退、疲労、プレフレイル、フレイルの割合

調節因子:年齢、性別、低身体活動、高血圧、糖尿病、ビタミンD欠乏、胃炎/食道逆流、甲状腺機能低下症、肝疾患(肝硬変を除く)、心房細動/深部静脈血栓症/塞栓症、関節痛/腫脹、骨粗鬆症、冠状動脈疾患、慢性肺疾患、現在の喫煙、高尿酸血症、eGFR、LDL-コレステロールCRP、悪性腫瘍。

サルコペニアの定義:低ALM/BMI(男性:<0.789、女性:<0.512)

 

【結果】

1次アウトカム(ポリファーマシーとサルコペニアの関連)

E群 vs C群:16.3% vs 6.9%;調節OR 2.24(95%CI:1.33–3.75)

性別:男性-調節OR 2.09(1.04–4.21)、女性-調節OR 2.66(1.20–5.91)

 

サブ解析(ポリ・非ポリにおける歩行速度の減退、疲労、プレフレイル、フレイルの割合)

歩行速度の減退:15.5% vs 9.9%(p=.005)

疲労:12.6% vs 8.0%(p=.011)

プレフレイル:40.7% vs 28.5% (p<.001)

フレイル:1.3% vs 0.8%(p<.001)

 

【考察】

最近までフリーで全文読めたのですが、突然読めなくなっておりました。私はPDFを落としていたので読めましたが…

ポリファーマシーとサルコペニアとの関連が示唆される結果となりました。調節因子に関しては、疾患は多く調節されているように思いますが、栄養状態が調節されていないのが気になります。他にも漏れている因子はあるかもしれませんが、あまり詳しく知らないので…

それと、サルコペニアの定義はこれでいいのでしょうか?一般的なのですかね? BMIの大きな集団(海外はこのくらいが普通なのかもしれません…)なので、この基準だとサルコペニアに該当する人が多くなりそうです。

サルコペニアとの関連を調査した論文はほとんどヒットしなかったので、これから出てくるのかな?と期待しているところです。

 

【全体を通して】

フレイルもサルコペニアも、今回取り上げた論文ではポリファーマシーとの関連が示唆されました。いずれの文献でも調節因子が気になりました。もっとたくさんのことが複雑に絡んでいるような気がしますので。あとは定義ですね。他の文献も読みましたが、やはり定義がバラバラですね。その辺はしっかり合わせてほしいなと思いました。そう考えると、ポリファーマシーの定義は、「5剤以上」でまとまってきたのかなという印象です。

これらの文献を読んで考えてみたのですが、薬剤数がサルコペニアやフレイルに直接関連する可能性はそれほど大きくないのではないかと思いました。薬剤の中に、誘発させやすい薬剤がある可能性は十分に考えられますが、それを数で捉えてしまうとミスリードを招きかねないと思います。しっかりと処方内容を見ていかないといけないと思いますし、薬剤以外に関連因子が多くあると思いますので、そういったところも見ていければと思います。

論文を検索してもあまりヒットしなかった(特にサルコペニア)ので、今後疾患の認識が高まるとともに報告が増えてくることを期待したいです。

1/27(土) 第〇回 居酒屋抄読会ツイキャス配信のご案内

1/27(土)の20時頃から梅田にて居酒屋抄読会を開催します。そしていつものように、その様子をリアルタイムでこちらのツイキャスにて配信いたします。(もう何回目か分からなくなってしまいました(汗))

 

今回は欲張って2つの論文を読んでいこうと思います。いずれもポリファーマシーに関する論文ですが、1つはサルコペニアとの関連を、もう一つはフレイルとの関連を調査したものになっています。

Polypharmacy as a Risk Factor for Clinically Relevant Sarcopenia: Results From the Berlin Aging Study II.

J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2017 Dec 12;73(1):117-122.

PMID: 28481965

 

Is Polypharmacy Associated with Frailty in Older People? Results From the ESTHER Cohort Study.

J Am Geriatr Soc. 2017 Feb;65(2):e27-e32.

PMID: 28024089

※どちらもフリーで全文読めます。(→サルコペニアの論文がフリーでは読めなくなってしまいました…すでにPDFに落としていたので、配信ではそちらを使って進めていきます。)

 

サルコペニアって何?フレイルって何?という方もいらっしゃるかと思います。

私のお友達のけいしゅけ先生がブログにまとめてくださっていますので、そういった方は是非そちらをご参考にされてください!

・フレイルについて↓

keisyuke-blogyakkyoku.xyz

サルコペニアについて↓

keisyuke-blogyakkyoku.xyz

 

 

今回は8人のメンバーで抄読会を開催する予定です。

よろしければツイキャスのご視聴&ご参加をお願いします!

 

 

ちなみに、21時半からはAHEADMAP関東支部の抄読会の配信もありますので、そちらもよろしくお願いいたします。

aheadmap-kantou.hatenablog.com

とても面白そうなテーマですね!私はお酒を全く飲めないので、そこまでして飲みたいの??と思うわけですが(笑)

 

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2018.1.26追記

 

大事なことを忘れてました!

この翌日の1/28(日)の21時からは我らがJJCLIPの抄読会の配信があります!!

こちらもお忘れなく(^^♪

詳細はこちらです~

pharmasahiro.hatenablog.com

睡眠薬のリスクもろもろ-5(ベンゾジアゼピン系薬と肺炎)

文献を3つピックアップしました。

 

The Risk of Pneumonia in Older Adults Using Nonbenzodiazepine Hypnotics.

(非ベンゾジアゼピン(BZ)系催眠薬の使用における高齢者の肺炎リスク)

J Manag Care Spec Pharm. 2016 Aug;22(8):932-8.

PMID:27459656

 

P:総合保健医療システム(Kaiser Permanente Southern California(KPSC) and Northern California(KPNC)地域)に登録された65歳以上で、2011年1月から2012年12月に肺炎と診断された患者と、年齢、性別、active enrollmentに基づいて1:4でマッチされたコントロールから基準を満たした肺炎51,029症例と肺炎のない188,391例

E:非BZ系催眠薬の使用

C:非BZ系催眠薬の非使用

O:肺炎リスク

 

デザイン:症例対象研究

サブ解析:「BZ系薬およびその薬剤別(アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、タマゼパム)」、「現在(30日以内)・過去(31-90日前)・遠い昔(91日から365日前)別」、「現在の使用のうち短期間の使用(90日以内)・長期間の使用(90日以上)別」

マッチング:年齢、性別、active enrollmentにてされている。

調整された共変量:1年以内の肺炎、急性心筋梗塞、喘息、COPD、上気道感染症、抗痙攣薬、抗うつ薬抗精神病薬、BZD、気分安定剤オピオイド、酸分泌抑制薬の既往や使用、診断コストグループ(GxCG)スコア

Limitation:交絡因子の調整不足、処方データのため使用の実態が不明、非BZDのほとんどがゾルピデムのため非BZ系薬に一般的ではない可能性、カリフォルニア州のデータのため一般化できない可能性

 

※BZ系薬:アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、タマゼパムにて全体の89%

非BZ系薬:ゾルピデムが全体の98.5%、その他ザレプロン、エスゾピクロン

 

【結果】(全て対象は非使用群)

1次アウトカム(非BZ系薬の肺炎リスク)

調整オッズ比(aOR) 1.14;95%CI:1.08-1.20

 

2次アウトカム(BZ系薬およびその薬剤別(アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、テマゼパム)の肺炎リスク)

BZ系薬:aOR 1.16(1.13-1.20)

アルプラゾラムaOR 1.12(1.05-1.20)

クロナゼパム:aOR 0.99 (0.91-1.08)

 

サブ解析(現在(30日以内)・過去(31-90日前)・遠い昔(91日から365日前)別による肺炎リスク)

現在    ;非BZ系薬:aOR 1.27 (1.18-1.36) 、BZ系薬:aOR 1.28 (1.23-1.33)

過去    ;非BZ系薬:aOR 1.13 (1.00-1.29) 、BZ系薬:aOR 1.15 (1.07-1.22)

遠い昔;非BZ系薬:aOR 0.96 (0.88-1.05) 、BZ系薬:aOR 0.99 (0.94-1.04)

 

サブ解析(現在の使用のうち短期間の使用(90日以内)・長期間の使用(90日以上)によるリスク)

短期間;非BZ系薬:aOR 1.57 (1.39-1.77) 、BZ系薬:aOR 1.69 (1.58-1.80)

長期間;非BZ系薬:aOR 1.16 (1.06-1.25) 、BZ系薬:aOR 1.14 (1.09-1.19)

 

【考察】

想像していたよりもリスクは低かったです。服用が近いほど、また服用開始からの期間が短いほどリスクが上がることが示唆されております。

ただマッチングの方法についてですが、マッチングしてから除外していますが、除外してからマッチングするのが通例ではないかと。でないと、1症例当たりのマッチング数に差ができてしまいます。あと、症例群とコントロール群でベースラインの疾患などの条件が違う過ぎる気が。なので、どこまで交絡因子が調節できているのかが疑問です。

 

 

Risk of pneumonia associated with incident benzodiazepine use among community-dwelling adults with Alzheimer disease.

(地域のアルツハイマー病の成人間の新規BZ系薬使用に関連する肺炎リスク)

CMAJ. 2017 Apr 10;189(14):E519-E529.

PMID:28396328

 

P:アルツハイマー病でかつ、BZ系薬を開始した5,232人とZドラッグを開始した3,269人とそれに1:1でマッチされたAD患者、計17,002人。

E:BZ系薬またはZドラッグ使用群

C:BZ系薬およびZドラッグ非使用群

O:肺炎の発症率

 

デザイン:症例対照研究

サブ解析:BZ系薬とZドラッグでの別でのリスクの差、薬剤別でのリスクの差、用量別等

傾向スコアマッチング:されている。項目はTable1、2、Appendix1に記載

 

【結果】

1次アウトカム(E群vsC群での肺炎発症率)

E群8.10件(8.03–8.16)/100人/年vsC群6.32件(6.28–6.35) /100人/年:aHR 1.22 (95%CI:1.05–1.42)

 

2次アウトカム(BZ系薬、Zドラッグ別)

BZ系薬:BZ系薬群8.51件(8.43–8.60)/100人年 vs コントロール群6.57件(6.53–6.62)/100人年:aHR 1.28(1.07–1.54)

Zドラッグ:Zドラッグ群7.28件(7.17–7.39)/100人/年 vs コントロール群5.92件(5.87–5.98) /100人/年:aHR 1.10(0.84–1.44)

 

サブ解析(用量別)

低用量 (<1.1 DDDs):HR 1.18 (1.01-1.39)

高用量(≥1.1 DDDs):HR 2.00 (1.05-3.80)

 

【考察】

肺炎の症例数がやや少ない印象です。なので、95%CIの幅が広いものが多くなっている気がします。それゆえにβエラーになっているものもありそうです。

肺炎リスクは、Zドラッグ群に関しては有意差がつきませんでしたがβエラーの可能性があると思います。なので、Zドラッグの方のリスクが少ないとは言い切れないと思います。絶対リスク差は1~2%/年という結果です。さほど大きなリスクではないような気もしますが…

 

 

The Use of Benzodiazepine Receptor Agonists and the Risk of Hospitalization for Pneumonia: A Nationwide Population-Based Nested Case-Control Study.

(ベンゾジアゼピン受容体アゴニストの使用と肺炎による入院リスク:国の集団ベースのコホート内症例対象研究)

Chest. 2017 Aug 4. pii: S0012-3692(17)31326-0.

PMID: 28782528

 

P: 2002年から2012年の台湾の国民健康保険研究データベースにおける肺炎罹患患者12,002人とマッチされたコントロール群12,002人

E:BZ系薬の新規使用

C:BZ系薬の非使用

O:肺炎リスク(非使用vs90日以内の使用vs91-365日前の使用)

 

デザイン:コホート内症例対象研究

サブ解析:「BZ系抗不安薬(日中のみ、夜間のみ、日中及び夜間)、BZ系催眠薬、非BZ系催眠薬の使用」、「超短時間型(半減期5時間未満)、短時間-中間型(半減期5時間から24時間)、長時間型(半減期24時間以上)(加えてDDD別も)」、「BZ系の薬剤別リスク」、「年齢別、性別、Charlson併存疾患スコア別、呼吸器疾患の有無別」など

マッチングされているか?:疾患リスクスコアマッチングが行われた。

調節された交絡因子は?:高脂血症、慢性腎不全、悪性腫瘍、COPD、喘息、他の呼吸器疾患、痴呆、コルチコステロイド使用、利尿剤使用、脂質低下剤の使用、年間外来受診数、入院、およびCharlson併存疾患指数(条件付きロジスティック回帰モデル)

Limitation:リフィルの使用率と内服コンプライアンス率が不明。他の交絡因子の可能性。台湾ではBZ系の使用率が高く、一般化できない可能性。

 

【結果】(全て比較対象は非使用群)

1次アウトカム(肺炎リスク(現在(90日以内)の使用、過去(91-365日前)の使用))

現在の使用:調節オッズ比(aOR) 1.86;95%CI:1.75-1.97

過去の使用:aOR 1.04;95%CI:0.97-1.11

 

サブ解析(BZ系抗不安薬(日中のみの使用、夜間のみの使用、日中及び夜間の使用)、BZ系催眠薬、非BZ系催眠薬の使用)

BZ系抗不安薬aOR 1.53(1.44-1.63)(日中:aOR 1.30(1.19-1.43)、夜間:aOR 1.53(1.40-1.67)、日中及び夜間:aOR 1.70(1.52-1.90))

BZ系催眠薬:aOR 2.42(2.16-2.71)

非BZ系催眠薬:aOR 1.60(1.46-1.76)

 

サブ解析(超短時間型(半減期5時間未満)、短時間-中間型(半減期5時間から24時間)、長時間型(半減期24時間以上))

超短時間型:aOR 1.93(1.76-2.10)

短時間-中間型:aOR 1.73 1.62-1.85

長時間型:aOR 1.34 1.23-1.45

(※DDD別の解析では、高い方のリスクが大きい傾向。項目が多すぎたのでこちらでは取り扱いません)

 

サブ解析(薬剤別)

・BZ系抗不安薬

アルプラゾラム(短時間-中間型):aOR 1.38(1.23-1.55)

ロラゼパム(短時間-中間型):aOR 2.15(1.95-2.38)

クロナゼパム(長時間型):aOR 1.54(1.34-1.77)

ジアゼパム(長時間型):aOR 1.32(1.17-1.48)

・BZ系催眠薬

ミダゾラム(超短時間型):aOR 5.77(4.31-7.73)

ブロチゾラム(超短時間型):aOR 1.75(1.05-2.90)

トリアゾラム(超短時間型):aOR 1.69(1.07-2.69)

エスタゾラム(短時間-中間型):aOR 1.67(1.43-1.94)

・非BZ系催眠薬

ゾルピデム(超短時間型):aOR 1.51 (1.36-1.67)

ゾピクロン(超短時間型):aOR 1.79 (1.41-2.29)

 

サブ解析(現在の使用群の年齢別リスク)

20-44歳:aOR 2.22(1.92-2.56)

45-64歳:aOR 2.15(1.93-2.40)

65-74歳:aOR 1.73(1.53-1.96)

≧75歳 :aOR1.60(1.42-1.79)

 

【考察】

これでもかなり端折ったのですが、解析が多すぎて、、、

「疾患リスクスコアマッチング」については調べてみましたがよく分かりませんでした。

これまでの2文献よりは全体的にややリスクが高くなっている印象です。高齢者群のみをピックアップしても高めですね。抗不安薬であろうと催眠薬であろうとリスクは高まりそうです。薬剤ではミダゾラムが突出していますが、それ以外は横並びといった印象です。このミダゾラムの内服があるのでしょうか??BZ系催眠薬のリスクが高いのは、このミダゾラムに引っ張られているような気がします。なのでミダゾラムを除くBZ系催眠薬と非BZ系催眠薬のリスクの差はあまりないかもしれません。

あと、高齢者よりも若年者のリスクのほうが高かったのが意外でした。これは、若年でBZ系薬を服用しているいうことは何かしらのリスクを抱えている可能性があること、若年者は肺炎にかかる可能性が低いのでその分リスクの上昇が大きくなるのではないかと考えます。

それにしても症例群での非使用が40%、コントロール群では50%と台湾ではかなり多くの方にBZ系薬が使用されている印象です。

 

【全体を通して】

BZ系薬にて肺炎リスクが上昇することが示唆されましたが、さほどリスクは高まらないように感じました。ただ、BZ薬は肺炎以外にも転倒・骨折等のリスクにもなりますので、それらを含めるとやはりリスクは大きいものになるのかなと感じました。