リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

睡眠薬のリスクもろもろ-5(ベンゾジアゼピン系薬と肺炎)

文献を3つピックアップしました。

 

The Risk of Pneumonia in Older Adults Using Nonbenzodiazepine Hypnotics.

(非ベンゾジアゼピン(BZ)系催眠薬の使用における高齢者の肺炎リスク)

J Manag Care Spec Pharm. 2016 Aug;22(8):932-8.

PMID:27459656

 

P:総合保健医療システム(Kaiser Permanente Southern California(KPSC) and Northern California(KPNC)地域)に登録された65歳以上で、2011年1月から2012年12月に肺炎と診断された患者と、年齢、性別、active enrollmentに基づいて1:4でマッチされたコントロールから基準を満たした肺炎51,029症例と肺炎のない188,391例

E:非BZ系催眠薬の使用

C:非BZ系催眠薬の非使用

O:肺炎リスク

 

デザイン:症例対象研究

サブ解析:「BZ系薬およびその薬剤別(アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、タマゼパム)」、「現在(30日以内)・過去(31-90日前)・遠い昔(91日から365日前)別」、「現在の使用のうち短期間の使用(90日以内)・長期間の使用(90日以上)別」

マッチング:年齢、性別、active enrollmentにてされている。

調整された共変量:1年以内の肺炎、急性心筋梗塞、喘息、COPD、上気道感染症、抗痙攣薬、抗うつ薬抗精神病薬、BZD、気分安定剤オピオイド、酸分泌抑制薬の既往や使用、診断コストグループ(GxCG)スコア

Limitation:交絡因子の調整不足、処方データのため使用の実態が不明、非BZDのほとんどがゾルピデムのため非BZ系薬に一般的ではない可能性、カリフォルニア州のデータのため一般化できない可能性

 

※BZ系薬:アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、タマゼパムにて全体の89%

非BZ系薬:ゾルピデムが全体の98.5%、その他ザレプロン、エスゾピクロン

 

【結果】(全て対象は非使用群)

1次アウトカム(非BZ系薬の肺炎リスク)

調整オッズ比(aOR) 1.14;95%CI:1.08-1.20

 

2次アウトカム(BZ系薬およびその薬剤別(アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、テマゼパム)の肺炎リスク)

BZ系薬:aOR 1.16(1.13-1.20)

アルプラゾラムaOR 1.12(1.05-1.20)

クロナゼパム:aOR 0.99 (0.91-1.08)

 

サブ解析(現在(30日以内)・過去(31-90日前)・遠い昔(91日から365日前)別による肺炎リスク)

現在    ;非BZ系薬:aOR 1.27 (1.18-1.36) 、BZ系薬:aOR 1.28 (1.23-1.33)

過去    ;非BZ系薬:aOR 1.13 (1.00-1.29) 、BZ系薬:aOR 1.15 (1.07-1.22)

遠い昔;非BZ系薬:aOR 0.96 (0.88-1.05) 、BZ系薬:aOR 0.99 (0.94-1.04)

 

サブ解析(現在の使用のうち短期間の使用(90日以内)・長期間の使用(90日以上)によるリスク)

短期間;非BZ系薬:aOR 1.57 (1.39-1.77) 、BZ系薬:aOR 1.69 (1.58-1.80)

長期間;非BZ系薬:aOR 1.16 (1.06-1.25) 、BZ系薬:aOR 1.14 (1.09-1.19)

 

【考察】

想像していたよりもリスクは低かったです。服用が近いほど、また服用開始からの期間が短いほどリスクが上がることが示唆されております。

ただマッチングの方法についてですが、マッチングしてから除外していますが、除外してからマッチングするのが通例ではないかと。でないと、1症例当たりのマッチング数に差ができてしまいます。あと、症例群とコントロール群でベースラインの疾患などの条件が違う過ぎる気が。なので、どこまで交絡因子が調節できているのかが疑問です。

 

 

Risk of pneumonia associated with incident benzodiazepine use among community-dwelling adults with Alzheimer disease.

(地域のアルツハイマー病の成人間の新規BZ系薬使用に関連する肺炎リスク)

CMAJ. 2017 Apr 10;189(14):E519-E529.

PMID:28396328

 

P:アルツハイマー病でかつ、BZ系薬を開始した5,232人とZドラッグを開始した3,269人とそれに1:1でマッチされたAD患者、計17,002人。

E:BZ系薬またはZドラッグ使用群

C:BZ系薬およびZドラッグ非使用群

O:肺炎の発症率

 

デザイン:症例対照研究

サブ解析:BZ系薬とZドラッグでの別でのリスクの差、薬剤別でのリスクの差、用量別等

傾向スコアマッチング:されている。項目はTable1、2、Appendix1に記載

 

【結果】

1次アウトカム(E群vsC群での肺炎発症率)

E群8.10件(8.03–8.16)/100人/年vsC群6.32件(6.28–6.35) /100人/年:aHR 1.22 (95%CI:1.05–1.42)

 

2次アウトカム(BZ系薬、Zドラッグ別)

BZ系薬:BZ系薬群8.51件(8.43–8.60)/100人年 vs コントロール群6.57件(6.53–6.62)/100人年:aHR 1.28(1.07–1.54)

Zドラッグ:Zドラッグ群7.28件(7.17–7.39)/100人/年 vs コントロール群5.92件(5.87–5.98) /100人/年:aHR 1.10(0.84–1.44)

 

サブ解析(用量別)

低用量 (<1.1 DDDs):HR 1.18 (1.01-1.39)

高用量(≥1.1 DDDs):HR 2.00 (1.05-3.80)

 

【考察】

肺炎の症例数がやや少ない印象です。なので、95%CIの幅が広いものが多くなっている気がします。それゆえにβエラーになっているものもありそうです。

肺炎リスクは、Zドラッグ群に関しては有意差がつきませんでしたがβエラーの可能性があると思います。なので、Zドラッグの方のリスクが少ないとは言い切れないと思います。絶対リスク差は1~2%/年という結果です。さほど大きなリスクではないような気もしますが…

 

 

The Use of Benzodiazepine Receptor Agonists and the Risk of Hospitalization for Pneumonia: A Nationwide Population-Based Nested Case-Control Study.

(ベンゾジアゼピン受容体アゴニストの使用と肺炎による入院リスク:国の集団ベースのコホート内症例対象研究)

Chest. 2017 Aug 4. pii: S0012-3692(17)31326-0.

PMID: 28782528

 

P: 2002年から2012年の台湾の国民健康保険研究データベースにおける肺炎罹患患者12,002人とマッチされたコントロール群12,002人

E:BZ系薬の新規使用

C:BZ系薬の非使用

O:肺炎リスク(非使用vs90日以内の使用vs91-365日前の使用)

 

デザイン:コホート内症例対象研究

サブ解析:「BZ系抗不安薬(日中のみ、夜間のみ、日中及び夜間)、BZ系催眠薬、非BZ系催眠薬の使用」、「超短時間型(半減期5時間未満)、短時間-中間型(半減期5時間から24時間)、長時間型(半減期24時間以上)(加えてDDD別も)」、「BZ系の薬剤別リスク」、「年齢別、性別、Charlson併存疾患スコア別、呼吸器疾患の有無別」など

マッチングされているか?:疾患リスクスコアマッチングが行われた。

調節された交絡因子は?:高脂血症、慢性腎不全、悪性腫瘍、COPD、喘息、他の呼吸器疾患、痴呆、コルチコステロイド使用、利尿剤使用、脂質低下剤の使用、年間外来受診数、入院、およびCharlson併存疾患指数(条件付きロジスティック回帰モデル)

Limitation:リフィルの使用率と内服コンプライアンス率が不明。他の交絡因子の可能性。台湾ではBZ系の使用率が高く、一般化できない可能性。

 

【結果】(全て比較対象は非使用群)

1次アウトカム(肺炎リスク(現在(90日以内)の使用、過去(91-365日前)の使用))

現在の使用:調節オッズ比(aOR) 1.86;95%CI:1.75-1.97

過去の使用:aOR 1.04;95%CI:0.97-1.11

 

サブ解析(BZ系抗不安薬(日中のみの使用、夜間のみの使用、日中及び夜間の使用)、BZ系催眠薬、非BZ系催眠薬の使用)

BZ系抗不安薬aOR 1.53(1.44-1.63)(日中:aOR 1.30(1.19-1.43)、夜間:aOR 1.53(1.40-1.67)、日中及び夜間:aOR 1.70(1.52-1.90))

BZ系催眠薬:aOR 2.42(2.16-2.71)

非BZ系催眠薬:aOR 1.60(1.46-1.76)

 

サブ解析(超短時間型(半減期5時間未満)、短時間-中間型(半減期5時間から24時間)、長時間型(半減期24時間以上))

超短時間型:aOR 1.93(1.76-2.10)

短時間-中間型:aOR 1.73 1.62-1.85

長時間型:aOR 1.34 1.23-1.45

(※DDD別の解析では、高い方のリスクが大きい傾向。項目が多すぎたのでこちらでは取り扱いません)

 

サブ解析(薬剤別)

・BZ系抗不安薬

アルプラゾラム(短時間-中間型):aOR 1.38(1.23-1.55)

ロラゼパム(短時間-中間型):aOR 2.15(1.95-2.38)

クロナゼパム(長時間型):aOR 1.54(1.34-1.77)

ジアゼパム(長時間型):aOR 1.32(1.17-1.48)

・BZ系催眠薬

ミダゾラム(超短時間型):aOR 5.77(4.31-7.73)

ブロチゾラム(超短時間型):aOR 1.75(1.05-2.90)

トリアゾラム(超短時間型):aOR 1.69(1.07-2.69)

エスタゾラム(短時間-中間型):aOR 1.67(1.43-1.94)

・非BZ系催眠薬

ゾルピデム(超短時間型):aOR 1.51 (1.36-1.67)

ゾピクロン(超短時間型):aOR 1.79 (1.41-2.29)

 

サブ解析(現在の使用群の年齢別リスク)

20-44歳:aOR 2.22(1.92-2.56)

45-64歳:aOR 2.15(1.93-2.40)

65-74歳:aOR 1.73(1.53-1.96)

≧75歳 :aOR1.60(1.42-1.79)

 

【考察】

これでもかなり端折ったのですが、解析が多すぎて、、、

「疾患リスクスコアマッチング」については調べてみましたがよく分かりませんでした。

これまでの2文献よりは全体的にややリスクが高くなっている印象です。高齢者群のみをピックアップしても高めですね。抗不安薬であろうと催眠薬であろうとリスクは高まりそうです。薬剤ではミダゾラムが突出していますが、それ以外は横並びといった印象です。このミダゾラムの内服があるのでしょうか??BZ系催眠薬のリスクが高いのは、このミダゾラムに引っ張られているような気がします。なのでミダゾラムを除くBZ系催眠薬と非BZ系催眠薬のリスクの差はあまりないかもしれません。

あと、高齢者よりも若年者のリスクのほうが高かったのが意外でした。これは、若年でBZ系薬を服用しているいうことは何かしらのリスクを抱えている可能性があること、若年者は肺炎にかかる可能性が低いのでその分リスクの上昇が大きくなるのではないかと考えます。

それにしても症例群での非使用が40%、コントロール群では50%と台湾ではかなり多くの方にBZ系薬が使用されている印象です。

 

【全体を通して】

BZ系薬にて肺炎リスクが上昇することが示唆されましたが、さほどリスクは高まらないように感じました。ただ、BZ薬は肺炎以外にも転倒・骨折等のリスクにもなりますので、それらを含めるとやはりリスクは大きいものになるのかなと感じました。

認知症のBPSDの治療薬もろもろ-8【抗精神病薬の高血糖リスク】

文献を3つ紹介していきます。

 

まずは、糖尿病患者に対する抗精神病薬高血糖リスクに関して。フリーで全文読めます。

Antipsychotic drugs and hyperglycemia in older patients with diabetes.

(糖尿病高齢者における抗精神病薬高血糖)

Arch Intern Med. 2009 Jul 27;169(14):1282-9.

PMID:19636029

 

P:カナダのオンタリオの健康データベース内の2002年4月1日から2006年3月31日までの間に抗精神病薬による治療を受けた66歳以上の糖尿病患者13,817人

E:現在の抗精神病薬使用

C:過去(180日以上前)の抗精神病薬使用

O:高血糖による入院

 

デザイン:コホート内症例対象研究(10症例とマッチング)

サブ解析:抗菌薬点眼、コルチコステロイド関連など

平均追跡期間:2年

平均年齢:78歳

傾向スコアマッチングは?:年齢(±1歳)、性別、コホート参加年数、追跡期間(±30日)

交絡因子の調整は?:年齢、性別、近隣の所得、糖尿病罹病期間、Charlson併存疾患指数、コホート参加前の薬剤使用、保健サービス使用履歴

Limitation:新規に抗精神病薬を必要とする糖尿病患者は他の高血糖のリスクを有する可能性、他の医学的疾患ではなく高血糖や糖尿病による入院にアウトカムを限定したこと、重症度の調整不足の可能性

 

1次アウトカム(現在の抗精神病薬使用患者vs過去の使用患者での高血糖による入院リスク)

 

aRR(調節レート比)(95%CI)

C群の発症率(2年間の追跡)

E群の発症率(2年間の追跡)

リスク差/年

NNH/年

全患者

1.50

(1.29-1.74)

11.1%

16.5%

2.7%

37

インスリン治療患者

1.40

(1.06-1.84)

24.1%

33.7%

4.8%

21

経口糖尿病薬治療患者

1.36

(1.12-1.66)

13.1%

17.8%

2.4%

42

糖尿病薬非使用患者

2.43

(1.61-3.66)

3.8%

9.2%

2.7%

37

※NNH:Number Needed to Harm

サブ解析 

・抗菌薬点眼と高血糖による入院との関連:aRR 0.67;95%CI:0.32-1.41

・コルチコステロイド使用と高血糖による入院との関連:aRR 2.13;95%CI:1.67-2.71

 

【考察】

たくさんサブ解析がありましたが、気になったものだけをピックアップしています。

現在の抗精神病薬使用患者において高血糖発症リスクが高く、特にインスリン使用患者で高いようです。NNHが20~40というのは、かなり小さい数字であり、十分に注意しないといけない印象です。

また、Table2には定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に分けた解析も載っていますが、定型抗精神病薬使用患者が少なかったようです。直接比較はされていないが、だいたい同じような結果になっているように思います。

なぜ抗菌薬点眼が取り上げられたのか分かりませんが…

 

次は、非糖尿病患者の高血糖リスクを。アブストラクトのみ閲覧可能です。

Antipsychotic drugs and the risk of hyperglycemia in older adults without diabetes: a population-based observational study.

(抗精神病薬と非糖尿病高齢者の高血糖リスク)

Am J Geriatr Psychiatry. 2011 Dec;19(12):1026-33.

PMID:22123274

pubmedからは上手く本文にリンクしないので、本文へはこちらをどうぞ。

Antipsychotic Drugs and the Risk of Hyperglycemia in Older Adults Without Diabetes: A Population-Based Observational Study - ScienceDirect

 

P:カナダのオンタリオの健康データベース内の2002年4月1日から2006年3月31日の間に抗精神病薬による治療を開始した、糖尿病のない66歳以上の高齢

E:現在の抗精神病薬使用

C:過去(180日以上前)の抗精神病薬使用

O:高血糖による病院受診(救急受診または入院)

 

デザイン:コホート内症例対象研究(10症例とマッチング)

2次アウトカム:非定型抗精神用薬、定型抗精神病薬別による高血糖による受診リスク

平均追跡期間:2.2年

平均年齢:78.3歳

 

【結果】

1次アウトカム(現在の抗精神病薬使用患者vs過去の使用患者での高血糖による受診リスク)

E群 vs C群:調節オッズ比(aOR) 1.52; 95% CI:1.07-2.17

 

2次アウトカム(非定型抗精神病薬、定型抗精神病薬別による高血糖による受診リスク)

・非定型抗精神病薬

E群 vs C群:aOR 1.44;95%CI:1.01-2.07

・定型抗精神病薬

E群 vs C群:aOR 2.86;95%CI:1.46-5.59

 

【考察】

どうやら先ほどの文献と同じコホートのようです。

非糖尿病患者においても抗精神病薬による高血糖のリスクはありそうです。非定型・定型抗精神病薬別による解析も行われているようですが、さほど差はなく、どちらもリスクにはなるのかな、という印象です。

 

最後に、抗精神病薬の薬剤別の高血糖リスクが検討されている文献を。全文フリーで読めます。

Atypical antipsychotics and hyperglycemic emergencies: multicentre, retrospective cohort study of administrative data.

(非定型抗精神病薬と緊急高血糖:他施設、行政データの後ろ向きコホート研究)

Schizophr Res. 2014 Apr;154(1-3):54-60.

PMID:24581419

 

P: 1998年4月1日から2010年3月31日の間、7つのカナダの州の行政の健康データやイギリスのClinical Practice Research Datalink(CPRD)による新規抗精神病薬使用患者725,489人(55%が66歳以上で、若年者のうち5%、高齢者のうち19%が既存の糖尿病)

E:糖尿病患者

C:非糖尿病患者

O:緊急高血糖症(高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態)の発症

 

デザイン:他施設後ろ向きコホート研究

2次アウトカム:抗精神病薬別(Other Atypicalの99%はクエチアピンとのこと)、年齢別、糖尿病の有無によるリスクの違い

追跡期間:1年間(投与開始時に試験に組み込まれた)

傾向スコアの項目(それぞれの比較において、限界治療効果を推定する傾向スコアを用いた治療重み付けの逆確率(IPTW)が用いられている):年齢、性別、コホートへの参加日、糖尿病歴、統合失調症認知症、近隣の収入の5分位、Romano併存疾患指数、コホート参加前年の入院数や外来での家族の医者への相談数や外来での精神医学的相談数、血糖値に影響を及ぼしたり病気のマーカーとなりうる選択された薬剤の使用。CPRDでは喫煙歴、アルコール消費量、BMIも組み込まれた。

Limitation:残存交絡因子の可能性。クエチアピンの投与群は糖尿病リスクが低い可能性。コードに基づいて病名を検索しているため、取りこぼしている可能性。単独投与の結果であること。

 

1次アウトカム(全抗精神病薬での糖尿病、非糖尿病における高血糖緊急症発症率)

・18-65歳

全体(n=324,512):粗発生率 0.93/1000人/年(95%CI:0.82-1.04)

糖尿病(n=16,793):粗発生率 11.49/1000人/年(95%CI:9.78-13.21)

非糖尿病(n=307,724):粗発生率 0.39/1000人/年(95%CI:0.31-0.46)

・66歳以上

全体(n=400,977):粗発生率 1.92/1000人/年(95%CI:1.77-2.08)

糖尿病(n=75,970):粗発生率 6.64/1000人/年(95%CI:5.98-7.30)

非糖尿病(n=325,007):粗発生率 0.85/1000人/年(95%CI:0.74-0.97)

 

サブ解析(抗精神病薬別かつ年齢別の粗発生率)

f:id:gacharinco:20171223101032p:plain

 

サブ解析(抗精神病薬別、年齢別かつ糖尿病の有無による粗発生率)

f:id:gacharinco:20171223101047p:plain

 

サブ解析(リスペリドンを基準とした他の抗精神病薬の年齢、全体・糖尿病別のハザード比)

f:id:gacharinco:20171223101100p:plain

【考察】

かなり詳しく解析されている印象です。1次アウトカムによる粗発生率では、非糖尿病患者の発症率は年間1%未満と、かなり低くなっていました。高血糖に関して、添付文書には警告欄に記載されていますが、非糖尿病患者に関しては気にしすぎなくてもいいのかなと思います。一方、糖尿病患者では十分な注意が必要だと感じました。

また薬剤別では、リスペリドンに比べてクエチアピンで有利な結果となっておりました。Limitationにあるようにクエチアピンは糖尿病に禁忌のため、リスクの低い患者になっている可能性もあるとは思います。クエチアピンのリスクが低いとは言い切れませんが、少なくとも他の抗精神病薬も同様のリスクを抱えている可能性があり、特に糖尿病患者における抗精神病薬服用時には、禁忌の薬剤ではなくとも高血糖に十分な注意が必要と言えるのではないでしょうか。

 

 

【全体を通して】

文献によって発生率にやや差はありますが、特に糖尿病患者における抗精神病薬の使用時には、高血糖リスクを十分に考慮しないといけないと感じました。その際、糖尿病に禁忌であるか、定型か非定型であるかどうかはさほど重要ではない気がします。非糖尿病患者には、多少リスクはあるかもしれませんが、それほど慎重にならなくてもいいのかな、という印象です。

睡眠薬のリスクもろもろ-4(ベンゾジアゼピン系薬と骨折)

今回はベンゾジアゼピン系薬の骨折リスクについて。

私の独断と偏見と拙い批判的吟味にて3つピックアップしています。

 

まずは、全文読めませんがメタ解析を。

Association between use of benzodiazepines and risk of fractures: a meta-analysis.

(ベンゾジアゼピン系薬使用と骨折リスクの関連)

Osteoporos Int. 2014 Jan;25(1):105-20.

PMID:24013517

 

P:19の症例対象研究と6つのコホート研究を含む25の研究の参加者

E:ベンゾジアゼピン系薬服用患者

C:ベンゾジアゼピン系薬非服用患者

O:骨折リスク

 

デザイン:メタ解析(19の症例対象研究と6つのコホート研究の計25研究)

 

【結果】

1次アウトカム(骨折リスク)

E群 vs C群:相対リスク(RR) 1.25;95%CI:1.17-1.34

 

その他のアウトカム(アブストラクトに書いてあるものをつらつらと)

・大腿骨近位部骨折のみのリスク:RR 1.35

・東部諸国におけるBZDと骨折リスクの関連:RR 1.27;95%CI:0.76-2.14 ←βエラーっぽい

・長時間型BZDの使用と骨折リスクの関連:RR 1.21;95%CI:0.95-1.54 ←βエラーかも…

・出版バイアス調整後の骨折リスク:RR 1.21;95%CI:1.13-1.30

 

【感想】

βエラーっぽい結果もありますが、本文を読んでみないとなんとも…

思ってたよりリスクは低い印象です。異質性は高そうですが。色んな解析がありそうなので、全文を読んでみたいですけどね。

 

 

次は、抗不安薬及び睡眠薬使用の大腿骨近位部骨折リスクについての前向きコホート研究を。

Risk of hip fracture among older people using anxiolytic and hypnotic drugs: a nationwide prospective cohort study.

(抗不安薬及び睡眠薬使用と高齢者間の大腿骨近位部骨折のリスク:全国規模の前向きコホート研究)

Eur J Clin Pharmacol. 2014 Jul;70(7):873-80.

PMID: 24810612

 

P:ノルウェーで1945年以前に生まれた人々(n=906,422)

E:2004-2010年に抗不安薬睡眠薬の暴露あり

C:2004-2010年に抗不安薬睡眠薬の暴露なし

O:2005-2010年の初発の大腿骨近位部骨折リスク

 

デザイン:前向きコホート研究

2次アウトカム:ベンゾジアゼピン抗不安薬の長時間型と短時間型それぞれのリスク

サブ解析:Z-drugの日中または夜間の転倒リスク

 

傾向スコアマッチング:されていない。

交絡因子の調整:されていない

 

Limitation:高齢者施設における投薬の情報が欠落している。

 

【結果】

1次アウトカム(抗不安薬及び睡眠薬の大腿骨近位部骨折リスク)

E群 vs C群

抗不安薬:標準化罹患比(SIR) 1.4;95%CI:1.4–1.5;attribute risk(寄与リスク)1.5%

睡眠薬:SIR 1.2;95%CI:1.1–1.2;寄与リスク2.3%

 

2次アウトカム(ベンゾジアゼピン抗不安薬の作用時間別)

短時間型ベンゾジアゼピン系:SIR 1.5 (1.4–1.6) ;寄与リスク0.7%

長時間型ベンゾジアゼピン系:SIR 1.2 (1.2–1.3) ;寄与リスク1.0%

 

サブ解析(Z-drugの日中と夜間のリスクの違い)

日中:SIR 1.1(1.1–1.2);寄与リスク1.7%

夜間:SIR 1.3(1.2–1.4);寄与リスク3.3%

 

【感想】

解析方法の理解が個人的には難しくて苦労しましたが、なんとか理解できた気がします。

DDDとかSIRとか、ちょっとややこしいですね。総量から平均を取る方法でいいのか?って気はしますが。。。

ここにでてきている抗不安薬というのはほとんどがベンゾジアゼピン系薬(うち7割が長時間型)で、睡眠薬というのはほとんどがZ-drugのようです。他の文献を読んでもそうですが、大部分がZ-drugになってるんですね。

全体的にリスクはそれほど増えないような気もします。寄与リスク(研究期間全体での寄与リスクのよう)も高くないですし。

睡眠薬より抗不安薬の方がSIRは高いけど寄与リスクは低いというのは、興味深い点ではあります。

 

 

最後に、ベンゾジアゼピンと大腿骨近位部骨折のリスクに関するネステッド症例対象研究を。

Impact of drug interactions, dosage, and duration of therapy on the risk of hip fracture associated with benzodiazepine use in older adults.

(高齢者のベンゾジアゼピンと関連した大腿骨近位部骨折のリスクへの薬物相互作用、用量、治療期間の影響)

Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2010 Dec;19(12):1248-55.

PMID:20931664

 

P: 1994年から2005年にPACEに登録された65歳以上のメディケアの患者のうち、入院に至った大腿骨近位部骨折17,198人とマッチされた85,990人のコントロールの患者

E:(過去14日以内の)ベンゾジアゼピン系薬服用患者

C:ベンゾジアゼピン系非服用患者

O:大腿骨近位部骨折のリスク

 

・デザイン:ネステッド症例対象研究

・サブ解析:長時間型or短時間型、アルプラゾラムvsロラゼパムvsゾルピデム、低用量vs中等量vs高用量、BDZの開始からの期間、アルプラゾラムロラゼパムゾルピデムの相互作用薬あり・なし・相互作用薬のみとの比較

・症例と対象はマッチされているか?:されている(1:5)

・調整された交絡因子は?:入院月にてマッチング→年齢、性別、人種、多変量解析(収入、医療の利用、併存疾患、併用薬(指標の日より3か月以内の処方))にて交絡因子を調整

・Limitation:処方データに基づいており、服用しているかどうかわからない。OTCの服用が考慮されていない。BZDに耐性のある人がいる可能性。効果を減弱させる薬剤を考慮していない。骨粗鬆症の重症度を考慮していない。

 

【結果】

1次アウトカム(ベンゾありvsベンゾなし)

E群 vs C群:調節相対リスク(RR) 1.16(1.10-1.22)

 

サブ解析(非使用が標準)(調節相対リスク)

☆作用時間別

・長時間型BDZ:1.05(0.94-1.16)

・短時間型BDZ:1.19(1.13-1.26)

※長時間型(半減期24時間以上):chlordiazepoxide, clonazepam, clorazepate, diazepam, flurazepam, halazepam, quazepam

※短時間型(半減期24時間以内):alprazolam, estazolam, lorazepam, oxazepam, temazepam, triazolam, eszopiclone, zaleplon, zolpidem

 

☆薬剤別

アルプラゾラム:1.01(0.92-1.11)

ゾルピデム:1.26(1.11-1.44)

ロラゼパム:1.29(1.19-1.40)

 

☆用量別

・低用量:1.09(1.02-1.17)

・中等量:1.21(1.11-1.31)

・高用量:1.32(1.17-1.48)

※低用量:daily dose ≤0.5 DDD、中等量:0.5DDD<daily dose≤1DDD、高用量:daily dose>1DDD

 

☆最初にBZDが処方された日

・0-14日前:2.05(1.52-2.77)

・15-30日前:1.42(1.03-1.96)

・31-60日前:1.34(1.02-1.77)

・61-90日前:1.05(0.86-1.28)

・91-180日前:1.21(0.99-1.48)

・181-270日前:1.53(1.31-1.78)

・271-360日前:1.10(1.04-1.17)

 

サブ解析(相互作用(効果を上昇させる可能性の薬剤の併用)の有無によるリスクの違い)

アルプラゾラム

 アルプラゾラムあり、相互作用薬なし:0.90(0.77-1.07)

 アルプラゾラムなし、相互作用薬あり:1.40(1.35-1.46)

 アルプラゾラムあり、相互作用薬あり:1.51(1.34-1.69)

ロラゼパム

 ロラゼパムあり、相互作用薬なし:1.32(1.18-1.48)

 ロラゼパムなし、相互作用薬あり:1.57(1.40-1.64)

 ロラゼパムあり、相互作用薬あり:1.94(1.74-2.17)

ゾルピデム

 ゾルピデムあり、相互作用薬なし:1.26(1.04-1.53)

 ゾルピデムなし、相互作用薬あり:1.44(1.38-1.50)

 ゾルピデムあり、相互作用薬あり:1.71(1.44-2.03)

 

【感想】

ベンゾジアゼピン系薬のリスクは、かなり低めのRR 1.16となりました。

薬剤別では3つの薬剤しか解析できなかったのは残念ですが。アルプラゾラムは差がなかったようで。

用量別では用量の多い方が、また最初に処方された日については処方後間もない方がリスクの高い結果に。でも用量別に関してはそれほど差がないのが意外ですね。少ないに越したことはないのでしょうが。

相互作用については、相互作用にて作用が増強する可能性のある薬剤の併用は転倒リスクにつながる可能性が示唆されております。これは十分に気をつけたいな、と。(薬剤のリストについては本文中に記載があります。)

 

 

【全体を通して】

意外とベンゾジアゼピン系薬によるリスクの上昇はそれほど多くないな、というのが率直な感想です。でもやはりリスクの上昇はあるので、できる限り減らしたり、また使わない必要性があると感じました。転倒や骨折には他のリスクも多くあるので、それらとの兼ね合いも十分に考えないといけません。逆にベンゾジアゼピン系薬には他のリスクも色々と示唆されていますので、そちらとの兼ね合いも重要かと思います。難しいですね…

私の勤務する病院ではブロチゾラム睡眠薬としてよく処方されるのでそのリスクを知りたかったのですが、wikipediaによると海外ではあまり承認されていないようで、文献を検索してもほとんど出てきませんでした…

 

【最後に】

黄川田先生がこのテーマに関するブログを遺してくださっていますので、紹介しておきます。

screamtheyellow.hatenablog.com