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リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

認知症のBPSDの治療薬もろもろ-3【不眠症に対するトラゾドン】

最近、認知症患者さんの眠前にトラゾドン(レスリン®、デジレル®)が処方されているのを時々目にします。色々調べてみると、不眠やせん妄の治療を目的に処方されることが多いようです。おそらくベンゾを避ける意味もあるのではないかと思います。

院内に採用がないこともあり、その効果のほどを調べたくて、文献を検索しました。

せん妄で検索してもあまりいい文献がヒットしなかったので、不眠で検索して文献を2つピックアップしました。ただ、不眠でもあまり参考になる文献が出てこなかったのですが…

 

Evaluation of trazodone and quetiapine for insomnia: an observational study in psychiatric inpatients.

(不眠症患者におけるトラゾドンvsクエチアピン)

Prim Care Companion CNS Disord. 2013;15(6). pii: PCC.13m01558.

PMID:24800124

 

P:18-65歳の精神疾患にて入院した患者(61人)

E:トラゾドン服用(30人)(132 study nights)

C:クエチアピン服用(31人)(180 study nights)

O:総睡眠時間(患者の主観および看護師の睡眠ログ)、睡眠効率(就床時間中の睡眠時間の割合)、睡眠潜時、中途覚醒(回数と持続時間。患者の主観および看護師の睡眠ログ)

 

デザイン:観察研究

2次エンドポイント:睡眠の質(リッカートスケールを使用)、副作用

交絡因子:特に調節されていない

ベースライン:年齢、人種、性別、入院回数、GAF(Global Assessment of Functioning)スコアについて記載されており、有意差はなし

内服していた睡眠時の鎮静剤の数:クエチアピン群2.79 vs トラゾドン群1.93 (p<0.01)

用量の中央値:いずれも100mg

 

【結果】

Parameter

Trazodone

Quetiapine

P Value

総睡眠時間(患者の主観), h

7.80 ± 2.21

6.75 ± 2.84

< .01

総睡眠時間(看護師のログ), h

9.13 ± 1.52

8.68 ± 2.03

.04

睡眠効率、%

84.02 ± 12.81

82.09 ± 14.35

.24

睡眠潜時, min

69.26 ± 68.27

67.59 ± 64.81

.83

中途覚醒回数(患者の主観)

1.60 ± 1.91

1.32 ± 2.00

.26

中途覚醒回数(看護師のログ)

0.52 ± 0.77

0.75 ± 1.04

.04

・副作用は便秘、下痢、吐気で有意にトラゾドン群の方が多いが、一過性のものが多かった。

・クエチアピン群は体重増加が認められ、また入院期間は長かった。

 

【感想】

残念ながら、認知症患者が対照ではありません。総睡眠時間に関しては、有意差があったようです。ただ、ベースラインが分からないので、実際にどのくらいの効果があったのかは不明です。中途覚醒回数(看護師のログ)でも同様ですね。

クエチアピン群の方がより重症の患者が多いような印象も受けるので、その辺も気になるところです。

しかしまあ、総睡眠時間の看護師ログでは8~9時間睡眠が摂れていることになりますので、寝過ぎのような気も、、、

 

 

Trazodone improves sleep parameters in Alzheimer disease patients: a randomized, double-blind, and placebo-controlled study.

(トラゾドンアルツハイマー症患者の睡眠のパラメータを改善させる。)

Am J Geriatr Psychiatry. 2014 Dec;22(12):1565-74.

PMID:24495406

 

P:睡眠障害のあるアルツハイマー病患者(30人)

E:トラゾドン群(15人)

C:プラセボ群(15人)

O:(1次アウトカム)夜間の平均睡眠時間(NTST)

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:夜間覚醒時間(WASO)、中途覚醒回数(Awakenings)、夜間睡眠割合(%Sleep)、日中総睡眠時間(DTST)、日中の睡眠回数(Naps)、認知(MMSE,FBDS等)および機能性(Katz Index)の諸数値

ITT解析はされているか?:Per Protocol解析

 

【結果】

f:id:gacharinco:20170514234132p:plain

f:id:gacharinco:20170514234215p:plain

 

【感想】

今回は認知症患者が対象で、それぞれの数値のベースラインの記載もありました。また、先ほどは患者や看護師による主観で総睡眠時間が調査されていましたが、今回はアンチグラフが使われています。

ただ、結果がベースラインとの差ではなく、治療後の数値の比較にて表されております。ベースラインとの差で表されるべきだと思いますし、結果を見る限りではもっと有意差がつく項目が増えるような気がします。

てことで、プラセボとの比較では睡眠の改善が期待できそうです。

 

【全体を通して】

認知症患者への不眠症に対してのトラゾドンは、それなりに効果が期待できそうですが、まだまだエビデンスが不足しているように思います。ベンゾジアゼピン系薬や抗精神病薬との効果、副作用の比較が今後研究されることを期待したいです。

結局採用に関しては持参された患者さんの残薬が無くなった際に代替薬として何が適当なのかよく分からなかったこと、(上記の文献を参考にして)それなりに効果は期待できそうなこと、今後処方されるケースが増えそうなこと、(ジェネリックの)薬価が安いことなどを理由として採用することにしました。

もしかしたら検索方法が悪く見落としているだけかもしれませんので、もっと適当な文献があれば教えてください。

糖尿病の有名文献もろもろ-5【LIXIA,LEADER,セマグルチド関連】

今回はGLP1作動薬についての文献をみていきます。

 

まずはリキセナチド(リキスミア®)についての文献から。

 

Lixisenatide in Patients with Type 2 Diabetes and Acute Coronary Syndrome.(ELIXA)

(2型糖尿病かつ急性冠動脈症候群患者へのリラグルチド)

N Engl J Med. 2015 Dec 3;373(23):2247-57.

PMID:26630143

 

P:180日以内に急性冠動脈イベントを経験した2型糖尿病患者(6068人)

E:リキセナチド投与(初回投与量10μg/日を2週間投与後、最大20μg/日へ増量) (3034人)

C:プラセボ投与(3034人)

O:(1次アウトカム)心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院の複合

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院+心不全による入院またはこれら+冠動脈再建術

ITT解析されているか?:されている

脱落率:E群27.5%、C群24.0%

患者背景(ベースライン等):30歳以上(平均C群60.6±9.6,E群59.9±9.7)、女性約30%、平均体重C群85.1±19.6,E群84.6±19.2、eGFR30 mL/分/1.73m3以上、HbA1c5.5~11.0(平均C群7.6±1.3,E群7.7±1.3)、 平均罹病期間年数E群9.4±8.3、C群9.2±8.2

平均追跡期間:25か月

 

結果

1次アウトカム(心血管死、心筋梗塞脳卒中、不安定狭心症による入院の複合)

 E群13.4% vs C群13.2%(ハザード比 1.02;95%CI:0.89-1.17)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+心不全による入院

  E群15.0% vs C群15.5%(ハザード比 0.97;95%CI:0.85–1.10)

 ・1次アウトカム+心不全による入院+冠動脈再建術

 E群21.8% vs C群21.7%(ハザード比 1.00;95%CI:0.90–1.11)

 ・総死亡

  E群7.0% vs C群7.4%(ハザード比 0.94;95%CI:0.78–1.13)

有害事象

 ・治療中断につながる有害事象

  E群11.4% vs C群7.2%(ほとんどが胃腸症状による差)

 

感想

この試験は、非劣性だけでなく優越性の検証も兼ねた試験デザインとなっておりました(それぞれのマージンの上限は1.3および1.0)。結局非劣性は示せましたが、優越性は示せず。対象患者がかなり限られるので、この結果をどう捉えてよいか難しいのですし、どこまで一般の患者に適応できるのかは分かりませんが。有害事象もありますし…

 

次は、リラグルチド(ビクトーザ®)に関する文献を。

 

Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.(LEADER)

(2型糖尿病患者におけるリラグルチドと心血管アウトカム)

N Engl J Med. 2016 Jul 28;375(4):311-22.

PMID:27295427

 

P:心血管リスクの高い糖尿病患者(9340人)

E:リラグルチド投与(1.8mg/日)(4668人)

C:プラセボ投与(4672人)

O:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中、冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

ITT解析されているか:FAS

脱落率:記載されていない??

患者背景:HbA1c7.0以上(平均E群8.7±1.6,C群8.7±1.5)、平均年齢E群64.2±7.2,C群64.4±7.2(心血管リスクは50歳以上と60歳以上で条件が違うが、詳しくは本文を)(女性約35%)、平均体重E群91.9±21.2, C群91.6±20.8、平均BMI E群32.5±6.3,C群32.5±6.3、平均HbA1c E群8.7±1.6,C群8.7±1.5、平均罹病期間年数E群12.8±8.0,C群12.9±8.1

平均追跡期間:3.8年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合)

 E群13.0% vs C群14.9% (ハザード比0.87;95%CI:0.78-0.97)→NNT 53/3.8年(=200/年)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

 E群20.3% vs C群22.7%(ハザード比0.88;95%CI:0.81–0.96)→NNT 42/3.8年(=159/年)

 ・総死亡

 E群8.2% vs C群9.6%(ハザード比0.85;95%CI:0.74–0.97)→NNT 72/3.8年(=272/年)

有害事象

 ・治療中断につながる有害事象

 E群9.5% vs C群7.3%(ほとんどが胃腸症状による差)

 

感想

こちらの試験も、非劣性だけでなく優越性の検証も兼ねた試験デザインとなっておりました(それぞれのマージンの上限は1.3および1.0。イメージ的には1次アウトカムが非劣性、2次アウトカムが優越性という感じでしょうか。)。リキセナチドでは示されなかった優越性がこちらでは示されました。ただし、用量が日本の最大用量の0.9mgの倍量だということには注意しないといけません。優越性は示せましたが、NNTをみるとそれほど差はないのかなと思います。もう少し長期間の結果をみてみたいなと。

 

最後に日本ではまだ発売されていないセマグルチドについて

 

Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes.

(2型糖尿病患者へのセマグルチドと心血管アウトカム)

N Engl J Med. 2016 Sep 15.

PMID:27633186

 

P:2型糖尿病患者(3297人)

E:セマグルチド投与群(週に1回)(0.5mg:826人、1mg:822人、計1648人)

C:プラセボ投与群(1649人)

O:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合

 

デザイン:ランダム化、2重盲検、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合、冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

ITT解析はされているか?:(おそらく)されている

脱落率:E群21.2%、C群18.8%

患者背景:HbA1c7.0以上(平均8.7±1.5)、平均年齢64.6±7.4 (心血管リスクは50歳以上と60歳以上で条件が違うが、詳しくは本文を)(女性約40%)、平均体重92.1±20.6、平均BMI32.8±6.20、平均罹病期間年数13.9±8.1

 

平均追跡期間:2.1年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、非致死的心筋梗塞(無症候性含む)、非致死的脳卒中の複合)

 E群6.6% vs C群8.9% (ハザード比0.74;95%CI:0.58-0.95)→NNT 44/2.1年(=91/年)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+冠動脈再建術、心不全および不安定型狭心症による入院の複合

 E群12.1% vs C群16.0%(ハザード比0.74;95%CI:0.62–0.89)→NNT 26/2.1年(=32/年)

 ・総死亡

 E群3.8% vs C群3.6%(ハザード比1.05;95%CI:0.74–1.50)

 ・新規または悪化する腎症

 E群3.0% vs C群1.8%(ハザード比1.76;95%CI:1.11–2.78)

 ・網膜症合併症

 E群3.8% vs C群6.1%(ハザード比0.64;95%CI:0.46–0.88)

有害事象

 ・胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢など)

 E群(0.5mg)50.7%、E群(1.0mg)52.3% vs C群(0.5mg)35.7%、C群(1.0mg)35.2%

 ・治療中断につながる有害事象

 E群(0.5mg)11.5%、E群(1.0mg)14.5% vs C群(0.5mg)5.7%、C群(1.0mg)7.6%(ほとんどが胃腸症状による差)

 

感想

この試験は非劣性の試験ですが、ハザード比は1.0を下回っています(ちなみに非劣性マージンは1.8でした)。追跡期間は短いですがしっかり差がついている印象です。有害事象(特に胃腸症状)による治療中断が、リキセナチド、リナグルチドと比べるとやや多い印象ですが、別の試験なので直接は比べられないとは思います。投与方法は週1回なので、そういった部分でもそれらの2剤より有意ではないかと思います。セマグルチドに関しては、内服薬も準備されているようなので、注目していきたいと思います。腎症や網膜症合併症に関しては、今後追っていく必要がありそうです。

 

まとめ

GLP1製剤は、作用機序的からDPP4阻害剤と比較されうる製剤かと思います。前回みたDPP4阻害剤の長期投与試験であるTECOS,SAVOR-TIMI53では同等性でしたが、今回みたGLP1製剤の試験では優越性が示唆されています。現在発売されているGLP1製剤は注射剤のみで、注射剤は処方する側からも敬遠されがちです。私はGLP1製剤の導入の指導をしたことはありませんが、骨粗鬆症を含む他の注射剤の導入の指導は何度もしたことがあります。最初は抵抗のある方が多いのですが、慣れれば高齢の方でも抵抗なく使用できるケースが多いように思います。長期投与の心血管イベントへの効果はGLP1製剤の方が優れている可能性があるので、こういったエビデンスを示し、どちらかがいいのかを患者さんに選んでもらうのもいいように思います。週1回製剤も発売されていますし、利便性はかなり高まっているとは思います。製剤間での効果の違いはありそうですので、その辺は注意が必要かもしれませんが。GLP1製剤とDPP4阻害剤を比較した試験もみてみたいものです。

 

てことで、今回はこの辺で。

糖尿病の有名文献もろもろ-4【SAVOR-TIMI 53,TECOS,EMPA-REG OUTCOME】

今回はDPP4阻害剤とSGLT2阻害剤の有名な論文についてみていきます。

一応、全部目を通したことのある論文だったので、結果は知っていましたが。。。

まずはDPP4阻害剤から。一つ目はサキサグリプチン(オングリザ®)について。

 

Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus.(SAVOR-TIMI 53)

(2型糖尿病患者におけるサキサグリプチンと心血管アウトカム)

N Engl J Med. 2013 Oct 3;369(14):1317-26.

PMID:23992601

 

P:心血管イベントの既往歴およびリスクのある2型糖尿病患者(16,492人)

E:サキサグリプチン投与(8280人)(eGFR≦50mL/分/1.73m3は2.5mg/日)

C:プラセボ投与(8212)人

O:(1次アウトカム)心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中の複合

 

デザイン:2重盲検、ランダム化、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:プライマリ複合アウトカムに加えて、心不全、冠動脈再建術、不安定狭心症による入院など

ITT解析されているか:されている。

脱落率:サキサグリプチン群18.4%、プラセボ群20.8%

患者背景(ベースライン等):心血管イベント(40歳以上で、冠状動脈、脳血管または末梢血管系を伴うアテローム動脈硬化症)の既往歴およびリスク(男性55歳以上、女性60歳以上で高血圧、脂質異常症、喫煙のうち少なくとも一つ)がある、平均年齢:E群65.1±8.5,C群65.0±8.6(女性3割強)、平均体重:E群87.7±18.7,C群88.1±19.4、平均BMI:E群31.1±5.5,C群31.2±5.7、平均罹病期間:E群10.3,C群10.3、平均HbA1c:E群8.0±1.4,C群8.0±1.4、

追跡期間の中央値:2.1年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合)

 E群7.3% vs C群7.2%(ハザード比 1.00; 95%CI:0.89-1.12)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+心不全、不安定狭心症による入院+冠動脈再建術

 E群12.8% vs C群12.4%(ハザード比 1.02; 95%CI:0.94-1.11)

 ・総死亡

 E群4.9% vs C群4.2%(ハザード比 1.11; 95%CI:0.96-1.27)

 ・心不全による入院

 E群3.5% vs C群2.8%(ハザード比 1.27; 95%CI:1.07-1.51)→NNH143/2.1年(=300/年)

有害事象

 ・急性膵炎

 E群0.3% vs C群0.2%(P=0.42)

 ・膵臓癌

 E群0.1%(5例) vs C群0.1%(12例)(P=0.095)

 

感想

1次アウトカムは非劣性でしたが、心不全による入院が増えてしまったという衝撃の結果(知ってましたけど)。NNH自体はすごく数字が大きいので、そんなに気にしなくてもいいにかもしれませんが。追跡期間が短いような気もしますが。インスリンの開始は減るようですし、SU剤等に比べると低血糖も少ないでしょうし、そういった意味での意義はあるかもしれませんが。

 

次はシタグリプチン(ジャヌビア®、グラクティブ®)について

 

Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.(TECOS)

(2型糖尿病患者への心血管アウトカムへのシタグリプチンの効果)

N Engl J Med. 2015 Jul 16;373(3):232-42. 

PMID:26052984

 

P:2型糖尿病と心血管疾患(既往)のある患者(14,671人)

E:シタグリプチン投与(7,332人)(100mg/日、30≦eGFR <50 mL/分/1.73m2の場合は50mg/日)

C:プラセボ投与(7,339人)

O:(1次アウトカム)心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または不安定狭心症による入院の複合

 

デザイン:2重盲検、ランダム化、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合、致死的および非致死的心筋梗塞、非致死的および致死的脳卒中、総死亡、心不全による入院、不安定狭心症による入院

ITT解析されているか:主にはper protcol解析がされている。

脱落率:シタグリプチン群(26.1%)、プラセボ群(27.5%)

患者背景(ベースライン等):50歳以上(平均年齢65.5 ± 8.0)、女性約3割、平均罹病期間11.6 ± 8.1、HbA1c6.5~8.0(平均7.2 ± 0.5)、平均BMI30.2 ± 5.6(平均体重は不明)、確立された心血管疾患を有する(定義:冠動脈疾患、虚血性脳血管疾患、またはアテローム動脈硬化性末梢動脈疾患の病歴)

追跡期間の中央値:3年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または不安定狭心症による入院の複合)

 E群11.4% vs C群11.6%(ハザード比 0.98; 95%CI:0.88-1.09)

2次アウトカム

 ・心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合

 E群10.2% vs C群10.2%(ハザード比 0.99; 95%CI:0.89-1.10)

 ・総死亡

 E群7.5% vs C群7.3%(ハザード比 1.01; 95%CI:0.90-1.14)

 ・心不全による入院

 E群3.1% vs C群3.1%(ハザード比 1.00; 95%CI:0.83-1.20)

有害事象

 ・急性膵炎

 E群0.3% vs C群0.2%(P=0.07)

 ・膵臓癌

 E群0.1% vs C群0.2%(P=0.32)

 

感想

心血管アウトカムへの非劣性は示されましたが。。。サキサグリプチンとは異なり、心不全の増加はみられませんでした(なので、サキサグリプチンを使う価値は…)。非劣性の試験ですし、優越性をみるには追跡期間が短いのかもしれません。効果が他の薬剤を同等となると、使うかどうか迷います。まあだからといってメトホルミンの次に使う薬剤がこれといって存在するわけではないので、そういった位置づけなのかなと。(SGLTの心血管アウトカムへのエビデンスをまだ知らないという設定で…。)

近々、リナグリプチン(トラゼンタ®)の長期投与についての報告もあるようなので、それも楽しみにしながら。

 

続いてはSGLT2阻害剤について。

あまりにも有名になのであえて取り上げるのもどうかと思いますが、エンパグリフロジン(ジャディアンス®)についての文献を。

 

Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. (EMPA-REG OUTCOME)

(2型糖尿病患者におけるエンパグリフロジンと心血管アウトカムと死亡率)

N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.

PMID:26378978

 

P:心血管リスクの高い2型糖尿病患者(7028人)

E:エンパグリフロジン10mg(2345人)または25mg(2342人)投与(4867人)

C:プラセボ投与(2333人)

O:(1次アウトカム)心疾患死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合

 

デザイン:2重盲検、ランダム化、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心疾患死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中+不安定狭心症による入院

 

ITT解析されているか:FAS

脱落率:E群(10mg)23.7%、E群(25mg)23.1%、C群29.3%

患者背景(ベースライン等):18歳以上(平均E群(10mg)63.0±8.6,E群(25mg)63.2±8.6, C群63.2±8.8)、BMI45以下(平均E群(10mg)30.6±5.2, E群(25mg)30.6±5.3 ,C群30.7±5.2)、平均体重E群(10mg)85.9±18.8, E群(25mg)86.5±19.0, C群86.6±19.1、eGFR30 mL/分/1.73m3以上、HbA1c:未治療では7.0-9.0、治療中は7.0-10.0 (平均E群(10mg)8.07±0.86,E群(25mg)8.06±0.84 ,C群8.08±0.84)、心血管リスクの詳細はかなり複雑で…、平均罹病期間は不明だが10年以上の罹病が約55%、5-10年が約25%、1-5年が約15%。

追跡期間の中央値:3.1年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合)

 E群10.5% vs C群12.1%(ハザード比 0.86; 95%CI:0.74-0.99)→NNT 63/3.1年(=194/年)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+不安定狭心症による入院

 E群12.8% vs C群14.3%(ハザード比 0.89; 95%CI:0.78-1.01)

 ・総死亡

 E群5.7% vs C群8.3%(ハザード比 0.68; 95%CI:0.57-0.82)→NNT 38/3.1年(=119/年)

 ・心血管死

 E群3.7% vs C群5.9%(ハザード比 0.62; 95%CI:0.49-0.77)→NNT 45/3.1年(=141/年)

 ・心不全による入院

 E群2.7% vs C群4.1%(ハザード比 0.65; 95%CI:0.50-0.85)→NNT 71/3.1年(=238/年)

有害事象

 ・性器感染症

 E群6.4% vs C群1.8%

 ・尿路感染症

 E群18.0% vs C群18.1%

副次的効果

体重↓、LDL↑、収縮期血圧↓、尿酸値↓↓もみられた。

 

感想

DPP4の論文の次に読むと、1次アウトカムで有意差が付いているので、インパクトがありました。心不全の入院は利尿剤による効果かな、と思いながら。でも改めてみると、NNTが結構大きくて、イマイチな気もします。まああくまで非劣性試験ですので。。。罹病期間は比較的長そうなので、初期から使ったらもっと差がつくのかな、追跡期間を長くしたら差がつくのかな?とも思いますが、果たして。あとはクラスエフェクトなのかどうか。作用機序的に、使用する上で気を遣う事の多い薬剤ですが、ビビり過ぎず、かといって安心しすぎずに使用していきたい薬剤かなと。

読むたびに印象が少しずつ違う文献ですので、また読んでみたいなと。

 

次は、この文献のアジア人解析についての文献です。欧米人とは体格等が全然違いますから、その辺での差が気になっていたので。

 

Empagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Asian Patients With Type 2 Diabetes and Established Cardiovascular Disease - Results From EMPA-REG OUTCOME®

(2型糖尿病および確立した心血管疾患のアジア人患者におけるエンパグリフロジンと心血管アウトカム)

Circ J. 2017 Jan 25;81(2):227-234.

PMID:28025462

 

P:心血管リスクの高い2型糖尿病患者(1517人)

E:エンパグリフロジン10mg(505人)または25mg(501人)投与(1006人)

C:プラセボ投与(511人)

O:(1次アウトカム)心疾患死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合

 

デザイン:2重盲検、ランダム化、プラセボ対象比較試験

2次アウトカム:心疾患死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中+不安定狭心症による入院

ITT解析されているか:FAS

脱落率:不明。有害事象による治療中断は、E群(10mg)13.3%,E群(25mg)13.4%,C群15.9%

患者背景(ベースライン等): 18歳以上(平均E群(10mg)61.1±8.8,E群(25mg) 61.1±9.4,C群60.7±9.4)、女性約25%、BMI45以下(平均E群(10mg) 26.8±4.2, E群(25mg) 26.5±4.0,C群26.6±3.9)、平均体重E群(10mg)71.1±13.6, E群(25mg) 70.5±13.2,C群70.7±13.2、eGFR30 mL/分/1.73m3以上、HbA1c:未治療では7.0-9.0、治療中は7.0-10.0 (平均E群(10mg) 8.06±0.85 群(25mg) 8.05±0.83,C群8.09±0.86)、心血管リスクの詳細はかなり複雑で…、平均罹病期間は不明だが10年以上の罹病が50%、5-10年が25%、1-5年が20%な感じ。アジア人9割、他1割ってどこ??

追跡期間の中央値:3.1年

 

結果

1次アウトカム(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合)

 E群7.9% vs C群11.4%(ハザード比0.68;95%CI:0.48-0.95)→NNT 29/3.1年(=91/年)

2次アウトカム

 ・1次アウトカム+不安定狭心症による入院

 E群10.0% vs C群13.5%(ハザード比 0.73; 95%CI:0.54-1.00)

 ・総死亡

 E群4.1% vs C群6.3 %(ハザード比 0.64; 95%CI:0.40-1.01)

 ・心血管死

 E群2.2% vs C群4.9%(ハザード比 0.44; 95%CI:0.25-0.78)→NNT 37/3.1年(=115/年)

 ・心不全による入院

 E群2.2% vs C群3.1%(ハザード比 0.70; 95%CI:0.37-1.33)

有害事象

 ・性器感染症

 E群3.3% vs C群1.0%

 ・尿路感染症

 E群17.7% vs C群18.6%

 

感想

多少数字が異なりますが、概ね同じ傾向ですね。やはりベースラインの平均BMIは4、体重は15kgほど異なっていたようです。総死亡や心不全による入院で有意差がついていないのは、検出力不足のように思います。

あとは、性器感染症はこちらの対照群の方で少ないのが印象的です。

 

次回はGLP1製剤についてみていきます。