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リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

COPD治療薬もろもろ-2【トリプルセラピー】

先日改訂されたGOLDのグレードDにおけるLABA/LAMAへのICSの追加について考えてみたく、ガイドラインの引用文献より文献を検索しました。でも、あまりいいのがなかったです。。。

 

文献155

Tiotropium in combination with placebo, salmeterol, or fluticasone-salmeterol for treatment of chronic obstructive pulmonary disease: a randomized trial.

(COPD治療におけるチオトロピウムとプラセボ、サルメテロール、フルチカゾン/サルメテロールの併用)

Ann Intern Med. 2007 Apr 17;146(8):545-55. Epub 2007 Feb 19.

PMID:17310045

 

P:中等度から重度のCOPD患者(GOLDのグレード分類の記載はなし)

E:チオトロピウム(TIO)+サルメテロール(SAL)またはフルチカゾン(HUL)/SAL

C:TIO+プラセボ

O:全身性ステロイドや抗菌薬による治療を必要としたCOPDの増悪を経験した患者の割合

 

デザイン:無作為化二重盲検プラセボ比較試験、ITT解析

2次アウトカム

 ・1年1患者あたりの増悪回数の平均

 ・医療従事者の緊急訪問や救急受診につながる増悪総数

 ・COPDによる入院数

 ・全ての原因における入院総数

 ・生活に関連したQOLの変化(SGRQスコア)

 ・呼吸困難の変化(呼吸困難指数(Transitional Dyspnea Index)を使用)

 ・肺機能の変化(FV1)

脱落率:合計39%( TIO+プラセボ群:47.4%、TIO+SAL群:43.2%、TIO+SAL/HUL群:25.5%)

 

結果

1次アウトカム(全身性ステロイドや抗菌薬による治療を必要としたCOPDの増悪を経験した患者の割合)

 ・TIO+プラセボ群:62.8%、TIO+SAL群:64.8%(相対差-2.0%、95% CI(-12.8)-8.8%)、TIO+FLU/SAL群:60.0%(相対差2.8 %、95%CI(-8.2)-13.8%)

  ・(感度分析②) TIO+プラセボ群:71.8%、TIO+SAL群:70.3%(相対差1.5%、95% CI(-8.7)-11.7%)、TIO+FLU/SAL群:64.1%(相対差7.6 %、95%CI(-2.9)-18.1%)

2次アウトカム

 ・初回の増悪までの平均日数:TIO+プラセボ群 130日、TIO+SAL群128日、TIO+FLU/SAL群 217日,RR 0.80 (95%CI:0.60-1.08)

 ・1年1患者あたりの増悪回数の平均:vs TIO+SAL群 RR 1.09 (95%CI:0.84-1.40)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.85 (95%CI:0.65-1.11)

 ・医療従事者の緊急訪問や救急受診につながる増悪総数:vs TIO+SAL群 RR 1.06 (95%CI:0.87-1.30)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.81 (95%CI:0.65-1.01)

 ・COPDによる入院数:vs TIO+SAL群 RR 0.83 (95%CI:0.54-1.27)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.53 (95%CI:0.33-0.88)

 ・全ての原因による入院総数:vs TIO+SAL群 RR 0.83 (95%CI:0.57-1.21)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.67 (95%CI:0.45-0.99)

 ・生活に関連したQOLの変化(SGRQスコア):TIO+プラセボ群 -4.5Pt、TIO+SAL群-6.3Pt(P=0.02)、TIO+FLU/SAL群MD -8.6Pt(P=0.01)

 ・呼吸困難の変化(呼吸困難指数(Transitional Dyspnea Index)を使用):TIO+プラセボ群 1.78(SD 4.08)、TIO+SAL群 1.40(SD3.96、P=0.35)、TIO+FLU/SAL群 1.84(SD3.86、P=0.38)

 ・肺機能の変化(気管支拡張薬投与前のFV1):TIO+プラセボ群 0.027L、TIO+FLU/SAL群 0.086L(P=0.049) ※vs TIO+SAL群は記載なし

 

結果

TIO+SAL群vs TIO+FLU/SAL群の結果を知りたかったのですが、直接のその比較については検討されておりませんでした。ただ、TIO+プラセボ群vs TIO+SAL群で有意差がなく、vs TIO+FLU/SAL群で有意差のあったものがあったので、それなりに効果はあるのかなと推測します。TIO+プラセボ群vs TIO+SAL群で差が出るべきとも考えますが。ただ、脱落が多いのがこの文献の大きな問題点ですね。

初回増悪までの日数はTIO+プラセボ群vs TIO+FLU/SAL群で有意差こそありませんでしたが、128日→217日へと大幅に増加しており、それなりに有効なのではと感じます。Figを見る限り、TIO+FLU/SAL群は試験の後半にかけて増悪例が増えたようです。

 

次もトリプルセラピーですが、トリプルセラピーからICSを休薬したらどうなるのかという文献を。

文献147

Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD.

(ICS休薬とCOPDの増悪)

N Engl J Med. 2014 Oct 2;371(14):1285-94.

PMID:25196117

 

P:COPD増悪の既往のある患者2,485人(GOLDのグレードC:61.2%、グレードD:38.1%、その他:0.7%)

E:チオトロピウム(18μgを1日1回),サルメテロー ル(50μgを1日2回)(12週かけてフルチカゾンを離脱)

C:チオトロピウム(18μgを1日1回),サルメテロー ル(50μgを1日2回),吸入ステロイドであるフルチカゾ ン(500μgを1日2回)

O:中等度または重度のCOPDの初回増悪までの期間

 

デザイン:ランダム化二重盲検並行群間比較試験、mITT解析

1次アウトカム:Oに記載

2次アウトカム:肺機能検査所見、健康状態、呼吸困難

脱落率:18.4%(E群:18.6%、C群:18.3%)

 

結果

1次アウトカム(中等度または重度のCOPDの初回増悪までの期間)

・ハザード比(HR)1.06(95%CI:0.94-1.19)

2次アウトカム

 ・肺機能検査所見(トラフFEV1):18週 C群との差 -38mL(P<0.001)、52週 C群との差-43mL(P=0.001)

 ・健康状態(SGRQスコアのベースラインとの差):27週 E群:0.55P t、C群:-0.42Pt(P=0.08)、52週 E群:1.15Pt、C群:-0.07Pt(P=0.047)

 ・呼吸困難:18週 E群:-0.001Pt、C群:-0.030Pt(P=0.36)、52週 E群:0.035Pt、C群:-0.028Pt(P=0.06)

 ・有害事象関連

   総死亡:E群 3.2%、C群 2.7%

   入院:E群 21.8%、C群 22.0%

   肺炎:E群 5.5%、C群 5.8%

 

感想

肺機能検査所見のみ差があったが、増悪までの期間や有害事象に差は見られず。必ずしもICSが必要ではないことを示しているとは思いますし、今回は差がありませんでしたが、ICSがあることで有害事象の可能性も出てきますので、それも考慮しないといけないと思います。ただ、肺機能検査所見が悪くなっているので、そのあたりの経過観察は必要なのではないかと思います。

あと注意しないといけないのは喘息との合併例(いわゆるACOS)かと思います。この判断は薬剤師には難しいので、ステロイド中止の提案はなかなかの難関のように思います。

 

トリプルセラピーについては更なる研究が必要だと思いますし、今後進んでいくのではないかと思います。

COPD治療薬もろもろ-1【LABA/LAMA vs LABA/ICS】

今回はCOPDの薬物治療について取り上げていきます。先日、COPDの国際的な指針であるGOLDのガイドラインが6年ぶりに改訂されました。変更点については、日経メディカルのこちらに分かりやすくまとまっております。

当院にはLABA/LAMAの配合剤の採用がありません。このガイドラインを見る限りでは採用しないといけないなと思いつつ、ガイドラインに載っている文献を読んでみることにしました。

 

まずは、LABA/LAMAとLABA/ICSを比較した文献から(引用文献127)

Indacaterol-Glycopyrronium versus Salmeterol-Fluticasone for COPD.

(COPDにおけるインダカテロール/グリコピロニウム(ウルティブロ) vs サルメテロール/フルチカゾン(アドエア))

N Engl J Med. 2016 Jun 9;374(23):2222-34.

PMID:27181606

 

P:過去1年に最低1回のCOPD増悪歴のある患者3362人

E:1日1回のインダカテロール(110μg)+グリコピロニウム(50μg)群1680人

C:1日2回のサルメテロール(50μg)+フルチカゾン(500μg)群1682人

O:全てのCOPD増悪の年間発生率

 

デザイン:無作為化二重盲検、ダブルダミー、非劣性試験(52週)

1次アウトカム:Oに記載

2次アウトカム:27個もあるようなので、気になったものだけを結果に記載。

脱落率:18.5%(E群:18.3%、C群:18.6%)(Fig1より)

ノバルティスファーマ(当初、ウルティブロの製造販売をしていた)の資金提供有。

 

結果

1次アウトカム

・全てのCOPD増悪の年間発生率(per protocol):E群3.59% vs C群4.03%; RR 0.89(95%CI:0.83-0.96)(NNT:23)

・全てのCOPD増悪の年間発生率(modified ITT):E群3.59% vs C群4.09%; RR 0.88(98%CI:0.82-0.94)(NNT:20)

2次アウトカム

 ・初回の全ての増悪発生までの期間:71日vs 51日,HR 0.84(95%CI:0.78-0.91)

 ・中等度から重度のCOPD増悪の年間発生率:0.98% vs 1.19%;RR 0.83( 95%CI:0.75-0.91)(NNT:48)

 ・初回の中等度から重度のCOPD増悪発生までの期間:127日vs 87日,RR 0.78(95% CI:0.70-0.86)

 ・好酸球の数:両群で有意差なし。

 ・FEV1:E群に有意な改善あり

 ・SGRQスコア:E群vsC群で-1.8点。臨床的に意味のある4点以上下がった割合は、E群49.2% vs C群43.7%で、有意差があった。

 ・肺炎発生率:3.2% vs 4.8%(NNH:63)

 

感想

ノバルティスからの資金提供があったことは割り引いて考えないといけませんが、全体を通してLABA/ICSに有利な結果は見られませんでした。非劣性試験であることは考慮しないといけないとは思いますが、よほどのことがない限りLABA/LAMAを優先して使うべきなのではないかと思います。一つの試験だけでは何とも言えないところもありますが。あとはこれがクラスエフェクトなのかということですが。

 

次に、ガイドラインに載っていた同様の他の試験もみようと思ったのですが、いわゆる代用のアウトカムばかりだったので断念。

探していたら、メタ解析が見つかったので、次はそちらを。ただし、アブストラクトのみしか読めませんでした。

 

Long-acting muscarinic antagonist (LAMA) plus long-acting beta-agonist (LABA) versus LABA plus inhaled corticosteroid (ICS) for stable chronic obstructive pulmonary disease (COPD)

(安定したCOPDにおけるLABA/LAMAvsLABA/ICS)

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Feb 10;2:CD012066.

PMID:28185242

 

P:最近増悪のない中等度から重度のCOPD患者(11試験、9839人)( 5試験:GOLDカテゴリーB、1試験:カテゴリーD、2試験:カテゴリーA,B、3試験:カテゴリーに関わらず参加者を募集した)

E:LABA/LAMA

C:LABA/ICS

O:増悪(1回以上増悪した患者の人数)、重篤な有害事象、SGRQスコアの変化、FEV1の変化

 

デザイン:平行群間RCT、クロスオーバー試験のメタ解析

2次アウトカム:肺炎発生率、総死亡、SGRQが4点以上改善した割合

リスクオブバイアス:全文読めていないので不明。

メタ解析に含まれた11試験中10試験で製薬メーカーからの資金提供あり(どちらの群かは不明だが、LABA/LAMA群か?)

 

結果

1次アウトカム

 ・増悪:OR 0.82 (95%CI:0.70- 0.96,I²=17%, 低い質のエビデンス)

 ・重篤な有害事象(SAE):OR 0.91(95%CI:0.79-1.05,I²=0, 中等度の質のエビデンス)

 ・SGRQスコアのベースラインからの変化:平均差(MD) -1.22 (95%CI:(-2.52)-0.07, I²=71%, 低い質のエビデンス)

 ・FEV1のベースラインからの変化:MD 0.08 L (95%CI:0.06-0.09, I²=50%,中等度の質のエビデンス)

2次アウトカム

 ・肺炎発生率:OR 0.57 (95%CI:0.42-0.79, I²=0%,低い質のエビデンス)

 ・総死亡:OR 1.01 (95%CI:0.61-1.67, I²=0%,低い質のエビデンス)

 ・SGRQスコアが4点以上改善した割合:OR 1.25 (95%CI:1.09- 1.44, I²=0%,中等度の質のエビデンス)

 

感想

これを見た限りでは、LABA/ICSをLABA/LAMAに優先して使う意義はなさそうです。製薬メーカーの資金提供がある試験が大半であること、参加者のベースラインのGOLDのカテゴリーが幅広くなっていることは考慮する必要がありそうです。異質性は低い解析が多いように思います。

あとはデバイスですね。特にうちの病院は高齢者が多いので。これが重要なんですよね。

 

 

次回はトリプルセラピーについてみていきます。

風邪に抗菌薬もろもろ-2

前回の続きとして、「抗微生物薬適正使用の手引き (案)」の中から、今回は「急性咽頭炎」、「急性気管支炎」の文献3つを取り上げていきます。

 

文献82

Different antibiotic treatments for group A streptococcal pharyngitis.(全文フリーではありません)

(A群連鎖球菌による咽頭炎における異なる抗菌薬の治療)

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Sep 11;9:CD004406.

PMID:27614728

本文中での紹介↓

「成人のGAS による急性咽頭炎に対する治療として、セファロスポリン系抗菌薬投与群とペニシリン系抗菌薬投与群とを比較した研究では、症状軽快について統計学的有意差はないこと(オッズ比 0.78 95%信頼区間 0.60~1.01)が報告されている。また、臨床的に再度増悪する症例については、セファロスポリン系抗菌薬投与群の方が統計的に有意に少なかった(オッズ比0.42 95%信頼区間 0.20~0.88)ものの、治療必要数(NNT)は33 と絶対リスク差は大きくないことが報告されている。」

 

P:A群連鎖球菌感染患者

E:抗菌薬(試験によって異なる)

C:対称となる抗菌薬(試験によって異なる)

O:(a)症状の緩和(痛み、熱)、 (b)罹患期間の短縮、 (c)再発予防、 (d)合併症予防(化膿性合併症、急性リウマチ熱、連鎖球菌性糸球体腎炎)

 

デザイン:異なる抗菌薬を使用した、5839人を含む19のRCTのメタ解析(9つは小児のみ、9つは12歳以上)

1次アウトカム:(a)症状の緩和(痛み、熱)、 (b)罹患期間の短縮、 (c)再発予防、 (d)合併症予防(化膿性合併症、急性リウマチ熱、連鎖球菌性糸球体腎炎)

2次アウトカム:有害事象

アブストラクトしか読めていないので、明確なことは不明。種々のバイアスのリスクについても不明だが、エビデンスの質はそれほどよくないよう。

 

結果

セファロスポリンvsペニシリン(7試験)

 ・発熱症状の消失(評価可能な患者の解析):OR 0.51, 95%CI:0.27-0.97; NNTB:20(5試験、1660人、非常に質の低いエビデンス)

 ・発熱症状の消失(ITT解析):OR 0.79, 95%CI:0.55-1.12(5試験、2018人、質の低いエビデンス)

 ・臨床的再発(成人+子供):OR 0.55, 95%CI:0.30-0.99; NNTB:50(4試験、1386人、質の低いエビデンス)

 ・臨床的再発(成人のみ):OR 0.42, 95%CI:0.20-0.88; NNTB:33(2試験、770人)

マクロライドvsペニシリン(6試験)

 ・いくつかのアウトカムにおいて差はなかった。

 ・子供における有害事象:OR 2.33, 95%CI:1.06-5.15(1試験、489人)

 ・いつの公開されていない子供への試験でのアモキシシリンvsアジスロマイシンにおける治癒割合(ITT解析):OR 0.76, 95%CI:0.55-1.05(1試験、673人)

 ・同有害事象:OR 2.67, 95%CI:1.78-3.99(1試験、673人)

カルバセフェムvsペニシリン(3試験)

 ・治療後の症状改善割合(成人+小児)(ITT解析):OR 0.70,95%CI:0.49-0.99; NNTB:14(3試験、795人)

 ・同小児:OR 0.57, 95%CI:0.33-0.99; NNTB:8(1試験、233人)

 ・同成人:OR 0.75, 95%CI:0.46-1.22(2試験、562人)

 

感想

全文を読めていないので、なんとも言えない部分もありますが。

ペニシリンマクロライド、セフェムを比べたもののみ結果が載っており、ほとんど差はつかなかったが、効果としてペニシリンが有意に上回っているものはなかったです。マクロライドにおいては、特に子供の有害事象は多いかもしれないです。

溶連菌=AMPCというイメージがあったので、結果には少し驚きました。有意な差はなくとも、セフェムに有意な傾向がみられたため、今後第一選択薬が変わることがあるのかな、と。まあでも今のところはAMPCでよさそうです。

 

 

文献85

Antibiotics for acute bronchitis.

(急性気管支炎に対する抗菌薬)

Cochrane Database Syst Rev. 2014 Mar 1;(3):CD000245. 

PMID:24585130

本文中での紹介↓

「急性気管支炎に関しては、一律の抗菌薬使用には利点が少なく、利点よりも副作用の危険性が上回ることが報告されており、」

 

P:基礎的な肺疾患のない、急性湿性咳嗽や急性気管支炎患者

E:抗菌薬投与

C:プラセボ又は無治療

O:抗菌薬によるアウトカムの改善と有害事象(詳細は下記のとおり)

 

デザイン:RCTのメタ解析(17試験、3936人)

1次アウトカム

 1.咳関連のアウトカム

  ⅰ)咳からの回復の時間

  ⅱ)痰の産生(患者の割合)

  ⅲ)咳、夜間の咳、湿性咳嗽患者の割合

 2.フォローアップ時の医者による全体的な評価

 3.一般的な臨床的なアウトカム

  ⅰ)症状の重症度

  ⅱ)活動の制限

  ⅲ)指定されたフォローアップ受診時の肺検査異常

2次アウトカム

 有害事象

 

評価者バイアス:問題ない(詳細は、Selection of studiesに記載あり)

出版バイアス:今回のアップデートではCENTRAL, MEDLINE, EMBASE, LILACSを検索。「There were no language or publication restrictions.」との記載あり

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITT解析はされているような…(「Assessment of risk of bias in included studies」に記載あり?)

異質性バイアス:それぞれのプロボグラムを見る限りはまずまずか?

 

結果

1次アウトカム

 1.咳関連のアウトカム

  ⅰ)咳からの回復の時間(咳の日数として)

    平均差(MD) -0.46日(95% CI(-0.87)-(-0.04),I²=32%)(7試験、2776人)

  ⅱ)痰の産生(患者の割合)

    痰の産生:リスク比(RR) 0.97(95%CI:0.82-1.16,I²=2%)(7試験、713人)

  ⅲ)咳、夜間の咳、湿性咳嗽患者の割合

    咳:RR 0.64(95%CI:0.49-0.85,I²=33%,追加の有益なアウトカムを得るのに必要な治療人(NNTB):6)(4試験、275人)

    夜間の咳:RR 0.67(95%CI:0.54-0.83,I²=0%,NNTB:7)(4試験、538人)

        湿性咳嗽患者:MD -0.43(95%CI:(-0.93)-0.07),I²=0%)(6試験、699人)

 2.フォローアップ時の医者による全体的な評価

    臨床的改善:RR 1.07(95%CI:0.99-1.15,I²=76%,NNTB:22(11試験、3841人)

    改善していない人の割合:RR 0.61(95%CI:0.48-0.79,I²=0%,NNTB:25)(4試験、538人)

 3.一般的な臨床的なアウトカム

  ⅰ)症状の重症度:統合されておらず。。。

  ⅱ)活動の制限:RR 0.75, 95%CI:0.46-1.22,I²=80% (6試験、891人)

  ⅲ)指定されたフォローアップ受診時の肺検査異常:RR 0.54, 95%CI:0.41-0.70,I²=6% ,NNTB:6(5試験、613人)

2次アウトカム

 有害事象:RR 1.20, 95%CI:1.05-1.36,I²=24% (12試験、3496人)

 

感想

多少効果はあるのかな…という感じですが。咳からの回復の時間は有意差こそ出ていますが、MD-0.46日ですから、半日ですね。これに意味があるとは思えないですね。有害事象は1.2倍ですか。有害事象の方が上回るかどうかは個人の判断になりますが、抗菌薬の必要性はあまり感じません。

 

 

文献99

Delayed antibiotic prescribing strategies for respiratory tract infections in primary care: pragmatic, factorial, randomised controlled trial.

(プライマリケアにおける呼吸器感染症への遅延抗菌薬処方戦略:実臨床での要因化ランダム化比較試験)

BMJ. 2014 Mar 6;348:g1606.

PMID:24603565

本文中での紹介↓

「近年、急性気道感染症における抗菌薬使用削減のための戦略として、Delayed Antibiotics Prescription (DAP:抗菌薬の延期処方)に関する科学的知見が集まってきている。初診時に抗菌薬投与の明らかな適応がない急性気道感染症の患者に対して、その場で抗菌薬を処方するのではなく、その後の経過が思わしくない場合にのみ抗菌薬を投与すると、合併症や副作用、予期しない受診などの好ましくない転帰を増やすことなく抗菌薬処方を減らすことができることが示されている。」

 

P:イギリスにて53人の医療関係者が25の診療所で2010年3月3日から2012年3月28日までに募集した、3歳以上の急性呼吸器感染症患者889人

E:抗菌薬処方なし及び遅延抗菌薬処方(①電話にて処方を要求するために診療所に再接触する(recontact)、②後日の日付を処方した処方箋を交付する(post-date)、③患者自身が処方を診療所から収集することを許可する(collection)、④患者に処方箋を与え、待つように求める(patient led))

C:抗菌薬即処方

O:2日目から4日目の症状の重症度の平均値(0~6、0=問題なし、6=最も悪い)

 

デザイン:オープンラベル、抗菌薬処方なし及び遅延抗菌薬処方群はランダム化、抗菌薬処方群は非ランダム化、ITT解析

1次アウトカム:2日目から4日目の症状の重症度の平均値

2次アウトカム

 ・14日以内の抗菌薬の使用

 ・有害事象(発疹、下痢、嘔吐、腹痛)

 ・朝夕の平均体温

 ・症状の持続期間(中等度から重度)

 ・満足度と抗菌薬の有効性への信念

 

結果(それぞれ抗菌薬即処方群については、Appendix2に記載あり。Appendixについては、こちらを参照ください。)

1次アウトカム(2日目から4日目の症状の重症度の平均値)

  処方なし, 再受診, 後日の日付, 収集, 患者主導,抗菌薬即処方; 1.62, 1.60, 1.82, 1.68, 1.75,1.76

2次アウトカム

 ・14日以内の抗菌薬の使用:26%, 37%, 37%, 33%, 39%,97%

 ・有害事象(発疹、下痢、嘔吐、腹痛):Appendix3に記載あり。それほど差はなし。

 ・中等度に悪化した症状の持続期間の中央値:3日,4日 ,4日,4日,4日,4日

 ・満足度:79%, 74%, 80%, 88%, 89%,93%

 ・抗菌薬の有効性への信念:71%, 74%, 73%, 72%, 66%,93%

 

感想

今回はC群を抗菌約即処方群にするか、抗菌薬処方なし群にするか迷いました。どちらでもいいような気はしますが。あと、抗菌薬遅延処方の③の意味があまりわかってません。。。

結果は予想通りといいますか、有効性には差がなかったようです。遅延処方で良さそうです。4群はどれでも結果には変わりなさそうでしたので、まあ症状の改善がない時や増悪時の再診でいいでしょう。

満足度と抗菌薬の有効性への信念が抗菌薬即処方群で他よりも高いというのは興味深いですね。特に満足度に関しては、処方の際にしっかり説明しないといけないなと思いました。

手引きでの遅延処方の文献は、あと2つが参考文献として取り上げられていますが、「Delayed antibiotics for respiratory infections. 」(文献98)はうまく統合できず評価が中途半端になっており、「Prescription Strategies in Acute Uncomplicated Respiratory Infections: A Randomized Clinical Trial.」(文献100)はn数が少なく、そこが引っ掛かったので、今回はこの文献99を取り上げました。後者(文献100)に関してはこの文献99と類似したデザイン、結果になっておりました。

 

 

全体を通して

コクランが多くて疲れました。どうしても2次アウトカムが多くなってしまうので、それをどこまで拾うかってのは一つの課題かなと思います。

さて抗菌薬に関しては、私は素人に毛が生えたくらいの知識しかありませんので偉そうなことを言える立場ではありませんが、様々な研修に参加したり、講演を聞いたことをふまえ、薬剤師が引っ張っていかないといけないと感じております。今回取り上げた風邪等における経口抗菌薬に関しては、医療者、患者双方への啓発が非常に重要だと思っております。私も、様々な角度から啓発を行っていきたいと考えております。

あと、最後にもう一つだけ文献を。

Japanese antimicrobial consumption surveillance: First report on oral and parenteral antimicrobial consumption in Japan (2009-2013).

J Glob Antimicrob Resist. 2016 Aug 6;7:19-23.

PMID:27973324 

今回の「抗微生物薬適正使用の手引き (案)」にも出てきますが(文献5)、現在の日本の処方動向を示した文献です。ぜひお読みください。抗菌薬処方のうち92.4%が経口抗菌薬であり、そのうち77.1%がセフェム、キノロンマクロライドという。。。手引き(案)での風邪関連の推奨処方薬はほとんどペニシリンですからね。。。